2012年2月のNHKスペシャルでは
「抗うつ薬に頼らない画期的な治療法」として、rTMSが紹介されました。
打ちひしがれた表情の患者さんが、見違えるように元気になられた場面が放送されました。
何だかとっても期待できそう…
rTMSは実際、どのくらい効果があるのでしょうか?
実際のデータを確認してみましょう。
この表はrTMSのメタ解析の結果です。
※メタ解析とは、根拠に基づく医療において最も質の高い根拠とされており
信頼されているデータです。
平均効果量(effect size: ES)という数値を見てみましょう。
rTMSによるうつ病治療のESは0.55
抗うつ薬治療のESは0.49です。
※ESは数字が大きいほど、効果が高いということです。
これによると、rTMSは抗うつ薬治療よりも少しだけ効果が高いという結果ですが
それ程治療効果が高いとは言えません。
しかし、次に
1剤治療抵抗性のうつ病(抗うつ薬を一種類だけ試したが治らなかった患者群)
を見てみましょう。
そうするとESが0.83まで上がります。
【治療抵抗性うつ病の治療】
治療抵抗性うつ病の治療としては
修正型電気けいれん療法(mECT:modify Electro Convulsive Therapy)
という治療が日本でも行われていますが、こちらのESはなんと0.91
非常に治療効果が高いという結果になっています。
治療抵抗性うつ病ならmECTの効果が一番。
薬物療法でダメならrTMSということなのですかね…
ではではrTMSにはどんなメリットがあるのでしょうか。
【rTMSのメリットは?】
・抗うつ薬治療に反応しないうつ病に対して、ある一定の効果がある
・修正型電気けいれん療法(mECT)の副作用の健忘や意識障害が少ない
この2つが考えられます。
rTMSもmECTも薬物療法も
何にでも言える事ですが、回復したからといって、
再発がなくなるわけではありません。
再発する方には維持療法として継続する必要があります。
欧米ではrTMSによる治療は米国では2009年、EUでは2011年に認可。
全米ではすでに400か所以上の施設で行われています。
欧米で行われているうつ病治療の流れを見てみると
↓
効果が得られない場合
↓
rTMS
↓
それでも効果がない場合
↓
mECT
という流れになっています。
日本でもrTMSの治療が認可されれば、同じような治療の流れになるかもしれません。
これは2016年に報告された、rTMSの方法別に比較したメタ解析です。
いろいろな方法がありますが、ここでは説明を省きます。
OR(オッズ比)が高いほど有効ですが、論文の中では
Bilateral(両側)rTMS
HF(高頻度)rTMS
LF(低頻度)rTMS
この3つの方法が研究報告も多く支持できるとしています。