therapilasisのブログ

オンラインカウンセリングのセラピラシス が提供する情報発信

わが国の自殺者の推移とその背景

日本の自殺死亡者数の推移

f:id:therapilasis:20180331182700p:plain

 

わが国における自殺者数は2万人台であったものが、1998(H10)年に1万人程度増加して3万人を超え14年間連続して3万人を超え続け、その後減少に転じています(図)。

1990年代以降の社会変動

  • バブル景気に狂乱した拝金主義と利己主義の蔓延

  • ネット社会による距離感の消失と時間の短縮化、情報過多と人間関係の表面的希薄化

  • バブル崩壊後の不況、終身雇用制の崩壊、リストラ解雇や過重労働、就職氷河期格差社会の進展

  • 努力しても報われない社会、将来への安心感の欠如、政治・経済の混迷と閉塞感など

                                    ↓

  • 社会からの逃避?→引きこもり、ニートの増大

  • 将来への諦めと絶望?→うつ病と自殺者の急増

1998年以降の自殺者の増加は、50代を中心とした働き盛りの男性の増加が著しく、バブル崩壊後の経済不況が大きく影響していると考えられます。

 

f:id:therapilasis:20180331212903p:plain

 

自殺の原因・背景は、多様かつ複合的なものだと思いますが、おそらく自殺行動前にはうつ病適応障害と診断されるような状態になっていた可能性が推測されます。

わが国では、60歳以上の中高年者が全体の約4割を占めています。高齢者の自殺の約7割は「健康問題」が原因・動機とされますが、継続的な身体的な苦痛が「うつ病」を引き起こして自殺につながることも多いように思います。

高齢者の場合、自分が病気で家族に迷惑をかけるくらいなら死んだ方がまし、といった考え方や、キリスト教イスラム教では自殺を禁じていますが、わが国では無宗教の方が多く、死をいさぎよしと美化するような日本独特の切腹の文化なども影響しているように思います。

高齢の自殺者は、自殺の前兆によって内科等は受診しますが、精神科は未受診の場合が多く、特に身体合併症のある高齢者は「うつ病」を見逃さないようにすることが重要です。

わが国は超高齢化社会が進展しており、2016年の平均寿命は、女性が87.14歳で世界2位,男性が80.98歳で世界2位であり、世界の中でも最長寿国になっています。したがって、今後高齢者の増加に伴って、高齢者のうつ病や自殺者が増加することが推測されますので、その対策も非常に重要です。

地域による自殺予防の取り組みとしては、うつ病など心の問題についての啓発活動、②健康問題や経済・生活問題の悩みを打ち明けられる相談窓口の活用、③単身者(特に死別者)や慢性的身体疾患を持つようなハイリスク者のケア、④保健師などによる頻回の訪問、⑤うつ状態のスクリーニングを徹底することなどで、自殺者が減少することが多く示されおり、各都道府県において市町村レベルでも、取り組むべき課題だと思われます。

年代別死因

(29年版自殺対策白書:平成27年における死因順位別にみた年齢階級・死亡率・構成割合)

f:id:therapilasis:20180331192031p:plain

また、わが国では15~39歳の各年代の死因の第1位は自殺で、これは先進国では日本のみで、その死亡率も他国より高く男性は10~44歳、女性は15~29歳で死因の第1位になっています。若い人の自殺が高止まりを見せているのどうしてでしょうか?

  • キリスト教イスラム教が自殺を禁じていることが、自殺抑制に繋がっているとすれば、日本人は自殺が罪深いことで、決してしてはいけないことだという認識が乏しいように思います。家庭や教育の場でも自殺はしてはいけないことだという認識を高めていく取り組みが必要ではないでしょうか。
  • 自殺報道などで、苦しみに耐えられず自殺を選択した人を見聞きすると、自己投影して、苦しみから逃れるために自らも自殺を選択してしまうようなことが起こります。有名人の自殺報道後の後追い自殺など報道の影響は大きく、WHOの自殺報道ガイドラインがありますが、まだ日本のマスコミの対応は徹底されていないように思います。
  • 子供の自殺の原因がいじめより学業不振や親子関係(虐待や育児放棄などがあれば当然自傷・自殺⬆︎)などという統計結果が出されたりしますが、自殺の原因は、亡くなる前の状況などから判断するので、表面化していない出来事があれば、正しい評価ができない場合もあります。
    最近のいじめは、陰湿で巧妙になっていて、表面化していないことも少なくありません。
  • いじめの社会構造を考えると村八分」という日本の島国的な文化が影響しているようにも思います。これも近年のマスコミの影響も少なくなく、何か問題が起こると報道の公平性・中立性とはほど遠い、総攻撃というか集団リンチのようなワイドショー的な一方向性の報道が目立ちます。
  • また、インターネットによる匿名の投稿による炎上やクレームなどが激増していますが、社会に不満を持つ人(例えば、引きこもりの人の一部や職場・生活に不満を持っている人など)や面と向かっては批判できない人達が、匿名ということで、あら探しをしては、執拗に攻撃するようなことが起こっているようにも思います。攻撃されると謝罪するまで収まらなかったり、会社はちょっとしたクレームに敏感に反応するようになり、インターネットの匿名性も社会を歪めているように思えてなりません。
  • 自由と権利だけを声高に叫んで、義務と責任を忘れた大人社会の状況が、子供社会にも蔓延して悪影響を与えないはずはありません。最近の政治家や官僚の不正、平然とごまかしと嘘がまかり通る社会、組織は頭から腐ると言いますが、これ以上日本人を劣化させない方策はないものでしょうか?

 

 ここ数年の自殺者の減少

f:id:therapilasis:20180331064615p:plain

ここ数年の自殺者数の推移からもわかるように2012年(H24年)に15年ぶりに3万人を下回り、その後も減少を続け、現在は急増前の水準以下まで減少してきています。特に経済問題を理由とした50歳代の男性の自殺者が大幅に減少しています。

ここ数年の自殺者数の減少の背景にはどのようなことがあるのでしょうか?

2006年に自殺対策基本法が施行され、①自殺防止の調査研究、情報収集、②自殺の恐れがある人が受けやすい医療体制の整備、③自殺の危険性が高い人の早期発見と発生回避、④自殺未遂者と自殺(未遂を含む)者の親族に対するケア、⑤自殺防止に向けた活動をしている民間団体の支援、⑥内閣府への自殺総合対策会議の設置・運営、⑦自殺対策の大綱の作成・推進などが、実施されてきたことが挙げられます。

2010年5月には日本精神神経学会、日本うつ病学会など主要4学会が、先進諸国は、すでにうつ病をはじめとする精神疾患を「がん」や「心臓疾患」とならぶ三大疾患として位置づけ、その対策を国家政策の最優先課題の一つとしていることから、わが国においても年間3万人を超える自殺者の背景に大きく関与する「うつ病」を「がんに次ぐ重大な社会的損失をもたらす疾病」と位置付け「国民病」として、治療と研究、啓発に緊急に取り組むよう求める共同宣言を採択しました。

2011年7月厚生労働省は、うつ病などの精神疾患の患者は年々増加しており、従来の4大疾病をはるかに上回っているのが現状であり、重点対策が不可欠と判断し、これまでの4大疾病(がん、脳卒中心筋梗塞、糖尿病)に精神疾患を加え、5疾病5事業とし、2013年度からは各都道府県が精神疾患の対策に予算が組み込まれることになりました。

また、バブルがはじけた急激な変動に国民がついて行けなかった状況から、不況が慢性化して、その状況に国民が慣れたことや、ここへ来て経済も多少上向きになり、就職率も過去最低だった2011年から6年連続で上昇して、過去最高になったことなど明るい兆しが出てきたことも影響していると思います。