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脳卒中後うつ病の治療の重要性

抗うつ薬治療による認知機能の改善

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  • 脳卒中うつ病抗うつ薬治療試験で、うつ症状は改善するものの認知機能の改善が認められないため、脳卒中うつ病は、認知症に伴う仮性うつ病と捉えるべきではないかという議論がありました。Robinsonらは、PSDの抗うつ薬治療で認知機能が改善する、いわゆる仮性認知症の病態があると主張していたため、治療試験でもそれを証明したいということで、抗うつ薬プラセボの比較でなく、ハミルトンうつ病評価尺度で、50%以上うつ症状が改善した群としなかった群で改めて、検討した結果、うつ症状が改善した群は有意に認知機能が改善することを示しました。

抗うつ薬治療による日常生活動作ADL(運動機能)の改善

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  • 認知機能と同様に、うつ症状が改善してもADLが改善するかしないかという議論がありましたが、やはり、うつ症状が改善した群は、ADLが有意に改善しました。

脳卒中後の抗うつ薬治療と生存率

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  • Robinsonグループが行った、脳卒中うつ病の予防試験と治療試験における9年間の生存率をみた追跡調査です。それによると、脳卒中後少なくとも3ヶ月間は予防試験あるいは治療試験で、抗うつ薬を服用した群は、9年後の生存率が70%弱であったのに対して、プラセボを服用した群の9年後の生存率は30%に満たないという結果で、リスク比で倍以上の差があるという衝撃的な結果が示されました。
  • 彼らは、抗うつ薬服用群は、脳内のBDNF(脳由来神経栄養因子)が増加して、脳神経の保護作用などが起こり、再梗塞などを防いだためではないかと考えています。

上記で示したように、脳卒中うつ病に対する抗うつ薬治療によって、脳卒中後の認知機能やADLの改善ばかりでなく、生存率まで改善することが示されており、脳卒中うつ病に対する抗うつ薬治療は非常に重要だと考えられます

 

抗うつ薬治療によって改善したPSD症例

  • 69歳 女性
    • 夫と長男家族3人の5人暮らしの方
    • X-1年10月左中大脳動脈領域脳梗塞で右半身の片麻痺を認め脳神経センターで入院加療。その後脳外科通院しながらリハビリ病院へも通っていました。
    • リハビリ病院へは、「早く治さなくては」といって比較的積極的に通っていましたが、X-1年12月頃より、「私がいてもみんなに迷惑ばかりかけて、ごめんなさい」と涙ぐみ、横たわることが多くなり、リハビリ病院へ行くのも辛そうな状態が続くということで、X年1月脳外からの紹介でメンタル科受診となりました。
    • 診察時は、うつむき加減で、「私はもうダメみたい」「みんな優しくしてくれるのに申し訳ない」「死ねないけど、生きていくのも辛い」と泣きながら訴える状況で、憂うつ気分、罪責感、悲観的思考が強く、脳卒中うつ病と診断しました。副作用の少ない抗うつ薬SSRIで治療を開始しました。
    • 投与開始1週目にいらしたときに、「少し気分が楽になったような感じがします」と初診時と比べると幾らか和らいだ表情になっていました。嘔気などもないとのことで、SSRIを増量しました。
    • 2週目になると、「悲しくなる感じがなくなってきました」と微笑みなが話され、家族からも悲観的な言動や涙ぐむことが少なくなったと客観的にも改善が認められました。嘔気等の副作用も出現せず、継続投与とした。
    • 4週目に受診したときには、「なんであんな風になってしまったのか自分でも不思議です」と、話しながら笑顔もみられるようになり、明らかにうつ症状が改善しました。その後、徐々にリハビリ病院の方へも、当初のように前向きに通院できるようになりました。
  • この症例は抗うつ薬の著効例ですが、リハビリに消極的だった方が積極的になったり、改善例はたくさんあります。