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うつ病と認知症との鑑別

認知症うつ病の仮性認知症との鑑別

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  • 高齢者のうつ病は、思考抑制などが強くなると仮性認知症といって、認知症と同様な症状を呈することがあります(10~30%)。仮性認知症の場合には、抗うつ薬治療などでうつ症状が改善すれば認知症様の症状も改善しますので、その鑑別は非常に重要です。
  • 上表は、両者の鑑別の要点ですが、実際の臨床の場では、なかなか鑑別が難しい場合も少なくありません。

 

認知症尾よび軽度認知症(MCI)の周辺症状

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  • 上図のように、認知症および軽度認知症(MCI)では、うつ病と共通した症状として抑うつや不安、アパシー(意欲低下)などが高率に出現しますので、認知症の始まりのうつ症状なのか、うつ病による仮性認知症なのかの鑑別は難しいわけです。
  • 認知症に随伴するうつ症状は、悲哀感、罪悪感、低い自己評価のような古典的症状よりも、喜びの欠如や身体的不調感のような非特異的な気分変調が多い認知症疾患治療ガイドラインCQ2-2)

  • 詳細な画像検査をすることで鑑別できることもありますが、実際の臨床では、副作用の少ないSSRISNRI抗うつ薬を投与して反応性をみて、認知機能が改善されれば仮性認知症だったということが判明することも少なくないように思います。

認知症と診断されてしまった高齢うつ病の一例

  • 68歳 女性
    • 夫と2人暮らしで年金生活を送っていましたが、X年1月に夫が死去して悲嘆に暮れたものの葬式や49日法要などはきちんと執り行っていました
    • しかし、一段落がついた後、徐々に口数が減り、近所に住む娘が来て何か聞いてもわからないと答えるばかりで、家事も十分できなくなりました。娘が心配して同年3月精神科病院を受診しました。
    • 長谷川式認知機能検査で30点中12点で、CT検査でも脳全体の萎縮が認められ、認知症と診断され認知症病棟へ入院となります。
    • 家族が面会に行っても、ほとんど口をきかず、食事も十分取れない状況が続き、徐々に衰弱が目立つ状態となってしまい、家族が心配して大学病院への転院を希望され、同年4月に転院となりました。
    • 転院時の診察では、弱々しくうちひしがれた表情で、問いかけにもなかなか返答がなく、首を振って、小声でわかりませんと答える程度でした。家族によると、49日法要までは、身の回りのことも含めて全て自分でやれていたとのことで、(認知症は突然始まらないので)荷降ろし状況によるうつ病の可能性が高いと診断しました。
    • 抗うつ薬投与を開始しますが、眠気や嘔気などの副作用が出現してしまい十分な薬物療法が行えず、修正型電気けいれん療法(m-ECT)の治療に切り換えました。
    • m-ECT5回目頃より、表情が穏やかになり、質問に対しても適切な返答ができるようになりました。
    • m-ECT10回終了時には、本来の状態に戻り、その後外泊をしましたが問題なく、約40日の入院で退院となりました。長谷川式認知機能検査でも30点で満点となり、当初の認知障害うつ病の仮性認知症であると判断しました。
    • ご本人も認知症病棟に入院したときのことを振り返って「自分は本当に認知症になってしまったと思って、本当に生きているのもつらいと思いました」と懐述されました。
  • この患者さんは、横断面の症状では、認知症との鑑別が難しかった可能性はありますが、症状の出現の仕方など病歴をきめ細かく聞いていたらうつ病と診断できたと思います。

認知症うつ状態に対する抗うつ薬の効果

  • HTA-SADD研究(UK National Institute for Health Research)(Banerjee S, Lancet , 2011)

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  • うつ症状を示すAD患者を対象とした、抗うつ薬による二重盲検の無作為化試験の結果、13週後と39週後のうつ症状の変化は偽薬を上回る利益は見られず、有害事象発生率は高かった。

  • リスクとベネフィットを常に勘案して、うつ症状が見られてから3カ月程度は観察を継続し、変化が見られないケースにのみ抗うつ薬の使用を考慮する。