軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)
- 自覚的なもの忘れ(記憶障害)の訴えと家族によるその確認
- 年齢に比し記憶力が低下→絶対的低下ではなく個人の以前の状態に比べて低下がみられる状態
- 記憶以外の全般的な認知機能はおおむね正常
- 運転や家計など日常生活の能力は保たれている→単純なものは保持されるが、複雑なものが障害
- 認知症ではない
- 可能な限り、血管性、外傷性または薬物誘因性の原因を除外
- 縦断的な認知機能の変化
- MCIと診断された患者さんは、治療や予防対策しないと1年でその10%、4年で約40%がアルツハイマー病などの認知症になるといわれています。
- アミロイドPETでAβが蓄積しているMCIでは、3年間で約6割が認知症に移行することが示されています。
- 最近の研究では、MCIの段階で適切な治療や予防対策を行うことで、認知症の発症を防いだり、遅らせることができることがわかっています。
MCIの4つのタイプ
DSM-5(2013)はdementiaという用語を原則廃止し、神経認知障害neurocognitive disorderという用語を使用しました。日本語版は、major neurocognitive disorderを「認知症」、mild neurocognitive disorder: mNCDを「軽度認知障害」という訳語を使用しています。
DSM-5 軽度認知障害(mild neurocognitive disorder: mNCD)
- 1つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚運動、社会的認知)において、以前の行為水準から軽度の認知の低下があるという証拠が以下に基づいている。
- 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害しない(すなわち、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの複雑な手段的日常生活動作は保たれるが、以前より大きな努力、代償的方略、または工夫が必要であるかもしれない)
- その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない
- その認知欠損は、他の精神疾患によつてうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症)
- 患者の年齢、教育年数、文化的な背景に対して適切な基準と比較しての神経心理学的検査成績は、神経認知障害に対する標準的評価の一部であり、特に軽度認知障害の評価では最も重要である.
- 認知症では、成績は適切な基準と比べ典型的には標準偏差の2倍かそれ以上(3%かそれ以下)を下回る。軽度認知障害では、成績は典型的には標準偏差1~2の範囲(3~16%の間)である。
アルツハイマー病などの認知症の病期とバイオマーカーの変化
(参考)
- MCIスクリーニング血液検査
- ApoE遺伝子検査
- 軽度認知障害に対する多施設共同医師主導治験 COMCID study