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認知症の薬物療法

認知症薬物療法としては、現在、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬が3剤、NMDA受容体阻害薬が1剤の計4剤があります。いずれも認知症の中核症状の進行抑制作用がありますが、BPSDに対してはAche阻害剤が賦活系、NMDA受容体阻害薬が鎮静系です。副作用としては、前者が嘔気・嘔吐などの消化器症状と精神的賦活作用として、興奮、易怒性などが出現することがあり、後者はめまいなどとともに過鎮静を引き起こすことがありますので、十分な注意が必要です。

 

 

アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬

  • ドネペジル塩酸塩(アリセプト
    • エーザイの杉本八郎らにより開発され、1997年(日本では1999年)世界発のアルツハイマー病(AD)治薬薬として発売されました。
    • ADの軽度・中等度・高度のフルステージで効果を発揮し、1日1回の服用で口腔内崩壊錠(OD錠)、ゼリー剤、ドライシロップなど多くの剤型があり、アドヒアランスに優れ、最も汎用されているAChE阻害薬です。
    • 認知症症状の進行抑制と、BPSD(特に抑うつアパシー)に対する効果が認められています。
    • 1日3mgから開始し、2週間程度で5mgに増量。高度ADに対しては、5mgを4週間投与後に10mgまで増量することができます。
    • 2014年レビー小体型認知症(DLB)の世界初の治療薬(3~10mg/日使用)として適応拡大。
    • 副作用発現頻度が明確となる調査を実施していませんが、他のAChE阻害薬と同様に、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢などの消化器症状のほか、興奮、易怒性などの精神神経系副作用、重大な副作用としては心循環器系の副作用、錐体外路障害などの出現に注意が必要です。

 

  • ガランタミン臭化水素塩(レミニール
    • 2011年発売、AChE阻害作用とニコチン性受容体(nAChR)に対する増強作用(APL)による、AChの放出作用。nAChRを介したグルタミン酸誘発性あるいはAβ誘発性の神経細胞死を抑制する神経保護作用が示されています。
    • 軽度から中等度のADの進行抑制、1日2回投与。8mgより開始して、4週ごとに16mg、24mgまで増量できます。
    • 脳血管障害を伴うADに対する効果が示されています。
    • 主な副作用としては、悪心(9%)、嘔吐(12.4%)、食欲不振(8.3%)、下痢(6.2%)、食欲減退(5.4%)など(承認時5%以上)

 

  • リバスチグミン(イクセロンパッチ 、リバスタッチ
    • 2011年発売。AChEとブチリルコリンエステラーゼの双方を阻害する薬剤。
    • 軽度から中等度のAD、経皮吸収型製剤(パッチ剤)で、経口薬に比べて血中濃度のコントロールが比較的容易で、消化器系の副作用も軽減、服用困難な患者にも有用
    • 1日1回5mgから開始、4週ごとに9mg、13.5mg、18mgまで増量できます。患者さんの状態によっては、9mgより開始して、4週後に18mgまで増量できます。
    • 背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替えます。
    • DLBへの適応はありませんが、DLBの疑いのあるADに対しての有効性が報告されています。
    • 主な副作用は、適用部位紅斑(7%)、適用部位そう痒感(36.6%)、接触性皮膚炎(25.4%)、適用部位浮腫(11.1%)、嘔吐(7.8%)、悪心(7.6%)、食欲減退(5.2%)(承認時5%以上)
      皮膚症状の予防のため、保湿剤の利用と貼付部位を毎日変える必要があります。皮膚症状が数日間続く場合はステロイド外用剤による治療を考慮します。

 

NMDA受容体阻害薬

  • メマンチン塩酸塩(メマリー
    • 2011年発売。アダマンタン誘導体を有する非競合的NMDA受容体阻害薬で、NMDA受容体に結合し、その働きを抑制し、グルタミン酸過剰放出による神経細胞死を防ぎます。
    • 中等度から高度のより進行したADの治療薬。BPSD、特に興奮・攻撃性に対する効果が強い。1日1回5mgから開始して、1週間に5mgずつ増量し、20mgまで増量できます。
    • 作用機序の異なるAChE阻害薬との併用が中等症以上のADで考慮されます。
    • 主な副作用は、めまい7%、便秘3.1%、体重減少2.2%、頭痛2.1%など(承認時)

 

各薬剤の特徴

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認知症の治療アルゴリズム

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認知症治療薬の効果(概念図)

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先日他院で認知症と診断されアリセプト5mg服用されていた患者さんが、もの忘れが強くなって、徘徊が目立つということで、認知症の症状悪化と考えられ10mgまで増量したところ、さらに症状が悪化して、家族への暴力行為が出現したということで、紹介診察になりました。

アリセプト増量後から落ち着きがなくなったということで、アリセプトの副作用である精神的賦活と判断し、アリセプトを5mgに減量して、メマリーを5mgから開始して10mgまで増量したところ徐々に安定してきました。

認知症薬は効果と副作用を常に勘案したうえで処方調整する必要があり、薬剤の効果がないと判断したら非薬物療法と適切なケアで対応する方が望ましい場合も少なくありません。

 

症状改善の具体例

  • 忘れて聞き返す頻度が減った。
  • 意欲がみられるようになり、会話も増えた。
  • 家事が以前よりも出来るようになった。
  • 表情が明るくなり、挨拶が出来るようになった。
  • 人物誤認があったが、子供を認識し、名前も言えるようになった。
  • トイレでしくじることが少なくなった。

 

服薬への工夫

  • 服薬をきちんとさせるために
    • 一包化して一度に飲みやすいようにする。
    • 服薬のボックスを使う。
    • カレンダーに貼って見やすい位置に置く。
    • テーブルの上に、「薬はのみましたか」と書いた紙を置く。
    • 家族がタイミングをみて電話する。
    • 服薬時刻をはずれてもよいので、ヘルパーの訪問時に服薬してもらう。
  • 薬を飲みたがらないとき
    • 飲みやすい剤型あるいはパッチ剤にする。
      (ただし、パッチ剤はかゆがったり、発赤が持続するようなら中止)
    • どうしても必要な薬にしぼる。
    • 食べ物やゼリーなどに混ぜる。
    • 薬の副作用(嘔気などがあるのに訴えられないこともあります)の可能性。