therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

身体症状症および関連症群

身体症状が中心ですので、精神科領域よりも一般診療科への受診が多くなる疾患です。

DSM-IV-TRまでは「身体表現性障害」に分類された診断項目は、多くの重複があり診断の境界が不明瞭で、精神科領域外の医療者が診断基準を理解して使いこなすことは困難でした。DSM-5では、この重複を改め診断分類を再編して、「身体症状症および関連症群という分類に改めています。

これまでの診断基準は医学的に説明がつかないことを要件としていましたが、医学的な原因を明らかにできないという理由で精神疾患の診断をつけることは適切ではないため、実際に身体疾患があったとしても、その捉え方を重視した診断基準になりました。

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身体症状症(Somatic Symptom Disorder)

1つ以上の身体症状に対する過剰で不適応的な思考、感情、および行動に関連した持続的な複数の身体的愁訴が特徴です。症状は意図的に作り出されたものではなく、既知の身体疾患を伴うこともあれば、伴わないこともあります。

この疾患を持つ人は、自分の症状を、身体疾患によると考えているため、検査などの結果で異常が示されなくても、その後も医師に検査や治療を強く求め続けます(ドクターショッピング)。

 

病気不安症(Illness Anxiety Disorder)

重い病気にかかっている、またはかかりつつあるという、とらわれと恐怖であす。検査を何度もやって説明しても、恐怖および症状が6カ月以上持続する場合に診断されます。

  

変換症/転換性障害(機能性神経症状症)Conversion Disorder (Functional Neurological Symptom Disorder))

従来の転換型ヒステリーに相当し、無意識的な動機(心因)による運動または感覚機能の変化の症状です。精神的ストレス因で症状の増悪など変動があります。診断は、原因としての身体疾患を除外した後,病歴に基づいて行います。(例:失立失歩、けいれん発作、失声、視野狭窄、難聴など)

 

他の医学的疾患に影響する心理的要因(Psychological Factors Affecting Other Medical Conditions) 

心理的または行動的要因が既存の医学的疾患の経過または転帰に有害な影響を及ぼしている場合に診断されます。いわゆる心身症がこの診断に当てはまります。

 

作為症/虚偽性障害(Factitious Disorder) 

自分自身または他者に負わせる身体的または心理的な徴候と症状のねつ造で、これらはごまかしであることがわかっています。外傷または疾病を誘発して自分自身または他者に対する治療を求める可能性もあります。診断には、その人が明らかな外的報酬がない中で、病気または外傷の徴候または症状について事実を曲げて述べていたり、それらを引き起こす目的で不正行為を行っていることを示す必要があります。

 

他の特定される身体症状症および関連症(Other Specilied Somatic Symptom and Related Disorder)

 身体症状症および関連症群の診断分類のいずれも完全には満たさない場合に適用されます。「他の特定される」という用語を使用して特定できる症状の例は、①6ヵ月未満の短期身体症状症あるいは②短期病気不安症、③過剰な健康関連行動を伴わない病気不安症、④想像妊娠

 

特定不能の身体症状症および関連症(Unspecified Somatic Symptom and Related Disorder)

 身体症状症および関連症群の診断分類のいずれも完全には満たさない場合に適用されます。診断を行うには情報が不十分であるという明らかに特殊な状況以外では使われるべきではありません。