統合失調症の概要
現在、昔のような古典的で典型的な統合失調症は、少なくなり、一部を除いては、軽症化と症状の多彩化が認められ、新しい治療薬の登場もあり、多くが社会復帰できるようになっています。
- 狭義の概念
- 主として思春期に発病し、特徴的な思考障害、自我障害、感情障害、人格障害などを主徴とし、多くは慢性に経過する原因不明の精神病。
- 歴史
- 1852年:モレル(フランス):早発性痴呆(Démence Précoce仏)という言葉を最初に記述。
- 1871年: ヘッカー(ドイツ):破瓜病(Hebephrenie)を著す。
- 1874年:カールバウム (ドイツ):緊張病(Katatonie) を著す。
- 1899年:エミール・クレッペリン(ドイツ):青年期に発症し痴呆の転帰をとる一群の疾病(破瓜病、緊張病、妄想性痴呆)を早発性痴呆(Dementia Precox)として著し、躁うつ病と並ぶ二大内因性精神病の1つとした。
- 1911年:オイゲン・ブロイラー(スイス):Dementia PrecoxをSchizophrenie(旧称:精神分裂病)と命名し、必ずしも若年発病ではなく、痴呆にも至らず、本性は精神/心の分裂にあるとした。
- 2002年8月: Schizophrenieの和訳は「精神分裂病」から「統合失調症」に改められた。
- 疫学
- 出現頻度:発症危険率 約8%(120人に1人)、性差なし
- 好発年齢:15~35歳が大半
- 早く発症するほど予後が悪い
- 10歳以下や40歳以上はまれ、45歳以上発症は「遅発性」として区別
- 女性より男性の方が発症が早い
- 病前性格(中核群):統合失調質→非社交的、無口、控え目、冷淡、変人、神経質なところと鈍感なところが同居
- 遺伝学的研究
- 病態仮説
- ドパミン過剰仮説
- グルタミン酸仮説
- その他の神経伝達物質
- 神経発達障害仮説
- 死後脳で大脳皮質の神経細胞構築に乱れがあり、 グリオーシスを伴わない。
- 脳画像研究により、発病前から脳構造の変化があると考えられる。
- 幼小児期から注意、言語、運動などの発達の遅れ、器用さや社交性の乏しさ、などの行動特徴が報告されている。
- 微細な神経学的徴候soft neurological signs、微細な身体形成異常や皮膚紋理の異常の頻度が高い。
- 胎生期や周産期になんらかの神経発達の障害によって生じた固定的な病変が、小児期からの行動や認知的特徴を形成するとともに、思春期に成熟を迎える脳領域の機能的異常を惹起することによって青年期に発症に至る。
- 脆弱性・ストレスモデル
- 心理社会的および環境的ストレス
- 家族因子
- 家族の表出感情(expressed emotion: EE)が高い患者は、家族のEEが低い患者よりも再発率が高い
- High-EEとは感情的に過度に侵襲的で押しつけがましい態度、批判的な言動、敵意、感情的巻き込み(過干渉、過保護、支配的関係、共生的関係など)
- 家族因子
- 精神力動論
- 個々の統合失調症患者においてどの心理社会的、環境的ストレス要因が特異的であるかを理解することが重要。