therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

ギャンブル障害

依存症には、アルコールや薬物などに依存する「物質依存」と特定の行為や過程に依存する「プロセス依存」がありますが、ギャンブル障害は後者に相当します。

カジノ法案(IR推進法案)が可決されそうですが、やはりギャンブル障害への対策が不十分だと思います。依存は、心の悩みを抱えた人が陥りやすい疾患であり、単に自己責任の問題ではありません。特にカジノの現場で金銭の貸し付けを認めれば、生活破綻者が増加して社会問題化するのは必至ではないでしょうか?

 

ギャンブル障害(Gambling Disorder)(DSM-5)

 

A.臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る持続的かつ反復性の問題賭博行動で、その人が過去12カ月間に以下のうち4つ以上を示している.

  1. 興奮を得たいがために、掛け金の額を増やして賭博をする要求
  2. 賭博をするのを中断したり、または中止したりすると落ち着かなくなる、またはいらだつ.
  3. 賭博をするのを制限する、減らす、または中止するなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある.
  4. しばしば賭博に心を奪われている(例:過去の賭博体験を再体験すること、八ンディをつけること、または次の賭けの計画を立てること、賭博をするための金銭を得る方法を考えること、を絶えず考えている).
  5. 苦痛の気分(例:無気力、罪悪感、不安、抑うつ)のときに、賭博をすることが多い.
  6. 賭博で金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰つてくることが多い(失つた金を“深追いする").
  7. 賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつく.
  8. 賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある.
  9. 賭博によって引き起こされた絶望的な経済状況を免ねるために、他人に金を出してくれるよう頼む.

B.その賭博行動は、躁病エピソードではうまく説明されない.

 

 

診断を支持する関連特徴

  • ギャンブル障害の人には、歪曲された思考(例:否認、迷信、偶発的な出来事の結果を超える力と支配力の感覚、自信過剰)が存在していることがあります。
  • ギャンブル障害の人の多くは、金が彼らの問題の原因であり、かつ解決策であると信じています。
  • ギャンブル障害の人の中には、衝動的で、競争心が旺盛で、精力的で、落ち着かず、そして飽きやすい人がいます。
  • こうした人達は、他人から認められるかどうかを過度に気にしており、賭博に勝ったときは浪費といえるほどに気前がよいかもしれません。
  • ギャンブル障害の人達の中には、抑うつ的で孤独であり、無力感、罪悪感、もしくは抑うつを感じたときに賭博をする人もいます。
  • ギャンブル障害の治療をしている半数の人達は自殺念慮をもち、約17%に自殺企図がありました。

 

症状の発展と経過

  • ギャンブル障害は青年期または若年成人期の間に起こりますが、中年期またはさらに高齢であっても発現します。一般的にはギヤンブル障害は何年もの経過で発現しますが、男性よりも女性のほうが進行は速いようです。
  • ギャンブル障害をきたすほとんどの人が、賭けの頻度や賭け金が徐々に増加するという賭博の様式を証言します。
  • 多くの種類の賭博に参加する人もいますが、ギャンブル障害をもつ人のほとんどは1つもしくは2つの種類の賭博が最も問題になります。
  • 賭博の様式は定期的または一時的かもしれませんが、ギヤンブル障害は持続的または寛解もあります。
  • 賭博はストレスや抑うつの時期、また物質の使用または中断の時期に増加します。
  • 深刻な賭博や重度の問題がある時期、完全に賭博をしないとき、そして問題にはならない賭博の時期があるかもしれません。
  • ギャンブル障害は時々、自発的な長期間の寛解に至ることがあります。寛解の時期に、彼らは自分が賭博を制限することに問題はなく、そしてまったく問題なくいくつかの種類の賭博をしていると誤って思い込んでいるかもしれませんが、結局はただギヤンブル障害への回帰を経験してしまいます。
  • 早期のギャンブル障害の発現は女性よりも男性でよりー般的です。
  • 若い時期に賭博を開始した人達はしばしばそれを家族や友人と一緒に行います。
  • 若年期のギャンブル障害の発現は衝動性や物質乱用と関連があるようです。
  • ギャンブル障害は高齢者よりも若年者や中年者でよリー般的です。
  • 男性は女性に比べて人生の早期に賭博を始め、ギャンブル障害を若年期に発症しやすく、女性は人生の晩期に賭博を始めそしてより短期間でギャンブル障害を発現しやすい。
  • ギャンブル障害の女性はその男性よりも抑うつ障害、双極性障害、不安症をもちやすい。
  • 女性はまたギャンブル障害の発症がより高齢であり、早く治療を求めますが、ギャンブル障害者の中で治療を求める割合は性別に関係なく低い(10%未満)。