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クレペリンの二大精神病論

クレペリンの二大精神病論

クレベリンの貢献の中で後世に大きな影響を与え続けているのは、主として『精神医学教科書』に示されている二大精神病の研究である。

この二大精神病概念の形成過程として、1883年の精神医学教科書初版ともいうべき『精神医学摘要』から1809~1913年の『精神医学教科書』第8版に至る30年間のあいだに、その疾病分類は大きな変化を示している。(1927年の第9版はクレベリンの死後、彼の弟子であるJ・ラングによって改訂されて共著の形で出版された。)

 

今日、二大精神病と呼ばれているものは、第8版でいうと、内因性痴呆(現在の統合失調症)と躁うつ病の二つを指す。

これらは第1版では、うつ状態、興奮状態、周期性精神病、原発性偏執狂、続発性薄弱状態などに分散して含められており、第2版、第3版では、憂うつ病、躁病、周期性・循環性精神病、妄想狂、偏執狂、後天性薄弱状態に入れられていた。   

第8版の躁うつ病は第1版ではうつ状態、興奮状態、周期性精神病に、第2版、第3版では憂うつ病、躁病、周期性・循環性精神病に入れられていた。これに対して内因性痴呆(現在の統合失調症)は、第1版では原発性偏執狂と続発性薄弱状態に、第2、第3版では偏執狂と後天性薄弱状態に含められていた。

二大精神病のひとつである内因性痴呆(現在の統合失調症)の原型が現われるのは、第4版の精神的変質過程においてである。

1892年の学会報告で、病因・症状・経過・持続期間・転帰などを疾病分類の基礎におく方法論が打ち出され、その方法論に基づいて改訂されたのが1896年の第5版である。この版では後天性精神障害と病的素質による精神障害の区別がなされ、後に内因性痴呆(現在の統合失調症)と呼ばれる二大精神病の一方は、代謝疾患に下位区分されて痴呆化過程(早発性痴呆、緊張病、類パラノイア性痴呆)と位置づけられた。もう一方の躁うつ病は体質性精神障害という下位区分に周期性精神病として偏執狂と並列しておかれた。

早発性痴呆(現在の統合失調症)と躁うつ病という二大精神病の確立は、1899年の第6版で行われた。その後の変更として最も重要な変更は、第6版、第7版の早発性痴呆(現在の統合失調症)が第8版で内因性痴呆(現在の統合失調症)とされ、その中で最終的には精神的衰弱に陥るが、その経過が緩慢であるという理由に基づいてパラフレニーが別個に分離された。

このようにクレペリンの疾病分類は、短期間のうちに大きな変貌を見せている。第9版の改訂の仕事に着手して間もなくクレペリンはこの世を去ることになるが、もしなお生き続けていたら、さらにその分類体系は変わっていった可能性がある。

 

第1版(1883年)

抑うつ状態(a 単純うつ病、b 妄想をともなううつ病)、II もうろう状態(a 病的睡眠状態、b てんかん性およびヒステリー性もうろう状態、c 昏迷―悦惚、d 急性痴呆)、III 興奮状態(a 活動性うつ病、b 躁病、c せん妄性興奮状態)、V 周期性精神病(a 周期性躁病、b 周期性うつ病、c 循環性精神病)、V 一次性原発性偏執狂、VI 麻痺性痴果、VII 精神衰弱状態(a 発育異常、b 道徳性精神病、c 神経衰弱状態、d 老年痴呆、e 続発性衰弱状態)。

 

第2版(1887年)

I うつ病、II 躁病、III せん妄、IV 急性疲労状態、V 妄想狂、VI 周期性および循環性精病、VII 偏執狂、VIII 一般的神経症、IX 慢性中毒、 X 麻痺性痴呆、XII 後天性衰弱状態、XIII 発達異常。

 

第3版(1889年)

I せん妄、II 急性疲労状態、III 躁病、IV うつ病、 V 妄想狂、VI 周期性および循環性精神病、VII 偏執狂、VIII 一般的神経症、IX 慢性中毒、 X 麻痺性痴呆、XI 後天性衰弱状態、XII 精神発達異常。

 

第4版(1893年)

I せん妄、II 急性疲労状態、III 躁病、IV うつ病、V 妄想狂、VI 周期性精神障害、VII 偏執狂、VIII 精神変質過程(a 早発性痴呆、b 緊張病、c 妄想痴呆)IX 一般的神経症、 X 麻痺性痴呆、XI 後天性衰弱状態、XII 精神発達異常。

 

第5版(1896年)

後天的精神障害

I 疲労状態、II 中毒、III 代謝疾患(a 粘液水腫、bクレチン病、c 痴呆化過程(早発性痴呆、緊張病,類パラノイア性痴呆)、d 麻痺性痴呆)、IV 脳疾患の際の精神病、V 退行期精神病。

病的素因による精神障害

I 体質性精神障害(周期性精神病、偏執狂)、II 一般的神経症てんかん、ヒステリー)、III 精神病質状態(変質精神病、神経衰弱、強迫、衝動性精神病、倒錯的性感)、IV 発達障害

 

第6版(1899年)

I 伝染性精神病、II 疲労精神病、III 中毒、IV 甲状腺性精神病、V 早発性痴呆、VI 麻痺性痴呆、VII 脳疾患の際の精神病、VIII 退行期精神病、IX 躁うつ病、X 偏執狂、XI 一般的神経症、XII 精神病質状態(変質精神病)、XIII 精神発達抑制。

 

第7版(1904年)

(I~Xまでは第6版I~Xと同じ)XI てんかん性精神病、XII 心因性神経症、XIII 本源的疾病状態(神経質、周期性、不機嫌と興奮、強迫、衝動、性的変倚)、XIV 精神病質人格、XV 精神発達抑制。

 

第8版(1909~13年)

I 脳外傷の際の精神病、II 脳病の際の精神病、III中毒、IV 伝染性精神病、V 梅毒性精神病、VI 麻痺性痴呆、VII 老年および初老期精神病、VIII 甲状腺性精神病、IX 内因性痴呆(a 早発性痴呆、b パラフレニー)、X てんかん性精神病、XI 躁うつ病、XII 心因性疾患、XIII ヒステリー、XIV偏執狂、XV 本源的疾病状態、XVI 精神病質人格、XVII 一般的精神発達抑制。

 

(内沼幸雄:現代精神病理学のエッセンス-フロイト以後の代表的精神病理学者の人と業績-参照)