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クレッチマーの敏感関係妄想

クレッチマーの敏感関係妄想

 

  • 『敏感関係妄想』の精神医学における位置づけについては、日本語翻訳版のために書かれた原著者の序に適切に述べられている。
  • 「・・・明瞭に区分された「疾患単位」をもととするクレペリンの思考図式に反対して、この書は、「多次元診断」すなわちある病像をそれに含まれる全因果因子に分析するという研究方法を創始したのである。とりわけこの書は、妄想疾患というものは不治であるという諦め的な考えを、はじめて系統立てて破ったのであった。・・・系統的に練りあげられた方法によって、多くの症例をよりどころにし、多年にわたる経過確認にもとづき、ある種の妄想病患者は精神療法によって治癒することを示した。そのための前提としては、もちろんまず人格の構造分析を行わねばならない。性格、環境、体験の相互作用の形で、病像の成立に関与した因子を広くときほぐして綿密にとり出し、内因的準備性と同様、外部から働きかける精神外傷に顧慮を払いつつ分析をすすめ、ついに衝動構造と倫理的人格との間に生ずる中心的葛藤に及んでゆくのである。・・・この道が、パラノイア分裂病の領域における診断学と精神療法をおしすすめ、また分化した神経症研究の方向への進歩をもたらすことができるよう願っている。」

 

  • クレッチマーは、敏感関係妄想によって精神医学に性格学―精神医学的性格学―を導入した。
  • 敏感関係妄想の基礎となる性格は敏感性性格である。敏感性とは、一面で並はずれての情性の柔らかさ、弱さ、繊細と傷つき易さ(無力性特性)を示しているかと思うと、他面では自意識に満ちた野心我意(強力性特性)を示す性格である。
  • 病因となる第一次体験として恥ずべき不完全さの体験、倫理的敗北の体験があり、これら純心理的要因のはかに遺伝負荷と疲億などの生物的要因が加えられている。また環境作用はしばしば重要な共同決定力を有している。結局、性格と体験と環境の心理的相互作用が敏感関係妄想の本質的病因をなしている。
  • ある体験や環境の反応としてある妄想が形成されるとき、内因性であり、しかも心理反応的力動の中に妄想発生の唯一つの了解可能性を見出している。これは内因性という仮説と心理了解との間の分野を解明する試みである。

(切替辰哉:現代精神病理学のエッセンス-フロイト以後の代表的精神病理学者の人と業績-参照)