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サリヴァンのパーソナリティ論

サリヴァンのパーソナリティ理論

  • サリヴァンは、人間の発達を衝動の形成過程としてではなく、対人関係の場における経験が決定する過程としてとらえた。彼の「精神医学における対人関係論」には、彼の発達論が次の七段階に分けて述べられている。
  • ①幼児期、②児童期、③少年少女期、④前青年期、⑤青年期前期、⑥青年期後期、⑦成熟期
  • 人間の活動には、2つの基本的欲求が要請される。
    • 身体的満足を要求する欲求
      • 乳児は出生時、何の不安もない状態にあるが、やがて睡眠、食欲、思春期以後の性欲など、生物学的なレベルのさまざまな欲求が生じ、それを満たすために筋肉の緊張が生じ、欲求が満足されると筋肉の弛緩が生じる。
    • 心理的安定の欲求
      • 乳児は次第に漠然と、他人の態度の中に自分を緊張させる要素があることを感じはじめる。こうして生じる心理的安定への欲求は、本質的に対人関係の中に存在し、人間の文化的環境と密接な関係をもつ。
    • このような満足(身体的)と安定(心理的)への要求を満たすために、乳幼児はすでに早くから大人の気分に、実に敏感に反応せざるをえない。これをサリヴァンempathy(共感、感情移入)と呼び重視した。
    • 幼児はempathyによって、母の喜怒哀楽、不安、賞賛、是認、危惧、否認を自覚し、母の否認や危避が子供に不安を生む。
    • サリヴァンにとって不安はその理論の中核的意義であり、とくに幼児期において大人たちとの交渉のうちに源を発するとするところに大きな特色がある。
    • 乳幼児にとって、母親との間に生じた軽度な不安は人間の社会的自我の発展に積極的な役割を果しうるが、強い不安は自我の形成に有害である。
    • 幼児期の対人関係において生じる不安をどのようにして避け、心理的安定を持続して獲得するかが、最も重要な課題となる。個体として不安から常に自由であり、安全を確保し、緊張から解放されようとするところからセルフ・システム(self-system)が生じる。
    • セルフ・システムとは意識可能、自己省察可能なパーソナリティの部分であり、子供が大人たちによって是認されたり否認されたりする経験は、子供に分別らしいものが生じるよりはるかに以前から生じており、この思考力や弁別能力のない時代にでき上がった形式がずっと潜在的に維持されて、最も深い所で広範にその人間に影響を与え続ける。人間は長い年月をかけてセルフを構成化し、システム化し、あらゆる犠牲をはらってその総合度、形式、方向を維持しようとする。
    • セルフ・システムの形式に関連してgood-me、bad-me、not-meの区別がある。幼児期のempathyによって子供の側に2つの相反する状態が生まれる。安心と不安、弛緩と緊張、快と不快である。前者を生じる時の母親は、子供によってgood-motherとして体験され、後者を生じる時のそれはbad-motherとされ、それに応じてセルフ・システムの方もgood-me、bad-meに分かれる。幼児期に成人からあまりにもひどい取り扱いを受けたり、非難を受けたりした時は、セルフ・システムはその体験を加工しえず、not-meとしてそのシステムの外にとどめる。やがて言語と象徴が理解できるようになるにつれ、good-meとbad-meが統合されてmeが生じてくるが、not-meはセルフ・システムの中に取り入れられず、「パーソナリティの残余部分」になる。
    • 言語象徴の形成は、人間の体験形式に決定的な変革をもたらすものとして、サリヴァンは発達段階に応じ、体験の質の変遷を以下の3つに区分した。
      • プロトタクシック(Prototaxic)
        • 最も分化度の低い様式で、幼児と重篤な精神病の一部に認められ、自己と外界を区別できず、学習とか見通しは不可能であり、単に身体の状態が全般として知覚されるだけである。
      • パラタクシック(Parataxic)
        • 言語を通じて象徴が形成され、学習と予想が可能になる。この段階の象徴は、自閉的で、外界の諸事物の関係は、因果法則ではなく、主観と感情により決定される。病的な場合だけでなく、成人の一般的な体験の中にも、時としてこの様式が出現して、その人を支配して神経症的な態度を形成する。
      • シンタクシック(Syntaxic)
        • 象徴や言語や事物間の関係づけの仕方は自閉的な枠組みをこえて、伝達可能になる。これらの心的機能が自分にも他人にも同様の意味を持ちうるようになり、ことの真偽を確かめるのに他人とのコンセンサスを目的とするようになる。
        • 選択的非注意:目的追求時、不必要な要素が意識下に侵入することを排除しようとする機制。
        • 解離:セルフ・システムの不断の排除的な働きによって意識外に常に保持される作用。フロイトの抑圧にあたる。解離された印象は、せいぜい悪夢として意識にのぼるしかなく、何らかの理由でセルフ・システムの崩壊した時にのみ多彩に意識されることになる。
      • 睡眠の機能
        • たとえば、強迫神経症者の睡眠は、通常大変よいもので、それは強迫神経症者のダイナミズムが安定していて、不眠をもたらすような破綻を通常示さない。強迫神経症者に睡眠障害が表われた時には、ある種の危険のせまったサインと考える。
      • 少年少女期にみられる友人関係の様式は「自分の欲する所を得るために、自分は相手に何をなすべきか」を問題にする態度(co-operation)であるのに対し、前青年期は、相手に気を配る関係で「私の友人への幸福と名誉のために私に何が出来るか」が問題になる対人関係(collaboration)になる。
      • サリヴァンは多くの分裂病者との観察から、少なくとも男子の破瓜病児は、その前青年期にこの種の親友関係を形成できなかった人が多く、もしそうでなかったら障害を引き起こしたであろう人が、この時期に良い関係を友人との間に形成しえたために救われたと思われる場合が多々あることを強調した。
      • 少年少女期に種々の困難(孤立、成熟、拒否等)があっても、その多くは、前青年期に新しいタイプの親密さが成立し、親友の目を通して自分自身をみることが可能になり、自己評価が上昇すれば、ほとんど問題にならない程度にまで弱まってしまう。
      • パーソナリティの発展に影響を与えるのは、同年輩の友人と関係をつくれず、より年少の者と関係をつくる場合で、これはそれほど悲劇的な状況をつくることはないが、すでに青年期にある年長の者と親友関係をつくる場合は、同性愛的か、少なくとも両性的傾向が生じ、その段階以上に進むことができなくなることがあるという。
      • 前青年期から青年前期への移行は、同性から異性の友人へ対象を移す時期に生じる困難である。親密であった親友が、スムースに青春期に移行し、自分はなお前青年期に留まらざるをえぬといったような場合(これは、後年分裂性障害を含む人に多い)また、異性の接近が、年少あるいは年長のそれにしか向かわない場合など、親密な同性関係の終焉に際して、ひとつの危機を経験することが少なくない。
      • この青年期への移行は、個人差が著しく、少なくとも3~4年という時差が生じる。青年期への移行が最も早いものと遅いものとの間で、これほどの時間差が生じるところに現代青年期が大きなストレスを持つ時代である。
      • 前青年期前後は、従来の力動理論からすると潜伏期とみなされ、あまり重視されなかった時期であるが、この時期を生活史上のひとつのポイントとして重視するべきである。分裂病者の中には、この時期の親友に裏切られたという体験を妄想的にしろ、もち続けている人が意外に多いし、対人恐怖症者の中には、この時期から異性の現われる青年期への飛躍を、親友関係の破綻の結果、失敗している人が少なくない。前青年期への関心の促しは、臨床家にとって刺激的である。とくに分裂病者の発病の契機が前青年期から青年期への移行に際して、異性への接近の時生じる場合が相当みられることを、サリヴァンは指摘している。

(文中の精神分裂病は、現在の統合失調症

 

(坂本健二:現代精神病理学のエッセンス-フロイト以後の代表的精神病理学者の人と業績-参照)