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脳卒中後うつ病と失語症

脳卒中うつ病失語症

  • 多くの研究者が脳卒中うつ病研究において、うつ状態の評価が困難との理由から失語症患者を除外して検討しているにもかかわらず、失語症脳卒中うつ病の原因だという仮説が議論されています。
  • Gainoiiは、生活環境のなかで、言語は最も重要な要素のひとつであるので、言語を失ったことによる抑うつや怒りの出現は、左半球障害と関連した了解可能な反応である抑うつ破局反応」にほかならないという仮説を主張しています(Gainotti G: Cortex, 8, 1972)。
  • Bensonも、抑うつは言語を失ったことによる二次的な心理的反応ではないかと述べています(Benson DF: Churchill Livingstone, New York, 1979)。
  • StarksteinとRobinsonは、失語の軽症型(名称失語、超皮質性失語)と重症型(ブローカ失語ウェルニッケ失語、全失語)で, うつ病の出現頻度に有意差はないこと、大脳基底核視床に病変を持つ患者は、失語症の有無にかかわらずうつ病の出現頻度に差はなく、大脳皮質の病変と同様に、失語症の有無よりも、病変部位がうつ病の頻度を決める重要な要素であることを示しました(Starkstein S.E and Robinson RG: Aphasiobgy, 1988)。
  • 一方、Damらは、失語症の重症度とうつ病の重症度は有意な相関はなかったとことを報告していますDam H et al: Acta Psychiatr Scand, 80, 1989)。
  • Herrmannらは、左大脳半球に単一病変をもつ失語症患者について検討して、急性期の脳卒中群のみ流暢性失語症ウェルニッケ失語症や名称失語症)に比べて非流暢性失語症ブローカ失語症や全失語症)が、うつ病の重症度が有意に高く、大うつ病の頻度も高かったことを報告しています。また彼らは、うつ病の重症度と大脳前頭極から病変までの近さが有意な正の相関があることを見出しました(Hermann M, et al: J Neurol Neurosurg Psychiatr, 56, 1993)。
  • Astromらは、失語症患者は非失語症患者に比べて入院時急性期と3カ月後で、うつ病の頻度が有意に高いが、1、2、3年後の評価ではうつ病の頻度に有意差はなかったと報告しています(Astrom M, et al: Stroke, 24, 1993)。
  • Kauhanenらは、失語症患者の70%が脳卒中後の3ヶ月でうつ病診断を満たし、12ヶ月後でも62%が満たしており、脳卒中後の3~12ヶ月におけるうつ病全体の有病率は減少したが、失語症が継続している患者では大うつ病が増加していることを示し、失語症脳卒中うつ病の有意なリスクファクターであると結論づけています。ただ、この研究評価の難しさは、うつ病診断が、評価の信頼性や妥当性が示されていない関係者や病院スタッフによる観察に基づいているということです(Kauhanen ML, et al: Arch Phys Med Rehabil, 81, 2000)。
  • SutcliffeとLincolnは、脳卒中失語抑うつ質問表(stroke aphasic depression questionnaire: SADQ)と呼ばれる抑うつ評価尺度、病院不安抑うつ尺度(hospital anxiety and depression scale: HADS)およびウエイクフィールド抑うつ尺度(Wakefield depression inventory)を用いて、脳卒中急性期後自宅に退院した患者において、10項目に短縮されたSADQ得点との相関は、HADSでは0.32、ウエイクフィールド抑うつ尺度では0.67であったと報告している(Sutcliffe LM and Lincoln NB: Clin Rehabil, l2(6), 1998)。
  • 失語症は、一般的には優位半球の病変によって出現します。現在までの研究成果では、非流暢性(ブローカ)失語症は、うつ病の高頻度と関連している可能性がありますが、失語症と理解力のない患者における実際のうつ病の有病率は明らかではありません。非流暢性(ブローカ)失語症うつ病との関連は、両者が左前頭葉病変によって引き起こされるということに基づいているのかもしれません。
  • 失語症が、うつ病を引き起こしているという主張はありますが、むしろ脳卒中うつ病失語症からの回復に大きな影響を与えているのではないかと考えられます。