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催眠感受性

催眠感受性

臨床催眠にとって重要な催眠感受性(hypnotizability)は、催眠被暗示性、催眠感応性とも呼ばれ、催眠暗示に対する反応能力(suggestibility)と定義される

ヒルガードの研究によると、低感受性(10~15%)、中感受性(75~85%)、高感受性(5~10%)であり、大半の被験者は中程度の催眠反応を示す。年齢的には、8~12歳が最も高く、その後少しずつ低下傾向を示す。

ハモンドがまとめた被暗示性テストによる代表的な催眠現象の反応発生率を表に示すが、動作に関する暗示は簡単であり、ほとんどの被験者に反応が起こるが、認知を対象とする暗示は、これより難しく約半数から1/4に生じるとされる。最も困難なのは知覚変容を暗示する項目(正と負の幻覚)であり、こうした現象を体験できるのは一部の高催眠感受性の持ち主に限られる。

 

催眠暗示反応の反応率(Hammond, 1991)

動作
腕降下 89~92
手の開閉 86~88
閉眼 74
腕挙上 73
(親指と人差し指の)フィンガーロック 67
眼のカタレプシー 56
年齢退行
誕生日の想い出 55
クリスマスの想い出 79
いい思い出(小学生) 23~24
普通の思い出(小学生) 48~50
後催眠暗示(動作) 36~53
後催眠健忘 27~48
夢(非意図的) 44~49
幻覚(正)
幻視 3
触覚 46
ハエ(手でよける) 39
アンモニア 36
聴覚(声) 9
幻覚(負)
アンモニア(無反応) 19
幻視 9~17
皮膚の無感覚 10~20(推定)
鎮痛 70~80(推定、程度に差あり)
自然健忘 7


催眠感受性と高い相関を示す性格要因は、没頭、空想傾向、想像没入などが指摘されている。疾患では、PTSD、DID(解離性同一性性障害)などのトラウマに起因する障害や睡眠時随伴症、恐怖障害、摂食障害、つわりなどは催眠感受性が高く、統合失調症や強迫性症障害、失感情症などでは低いとされている。 

 

ヒルガードらによる研究成果は、催眠感受性が心理特性であり、トランスを変性意識状態とみなすに値する根拠とされた。しかし、その後非状態論派の研究によって、催眠暗示に対する反応は訓練によって変化することが示され、個人の催眠感受性は必ずしも不変要因ではなく、訓練によって亢進し、その効果は持続する。また、個人の動機や置かれた状況によっても大きく作用されることが知られている。

 

催眠による鎮痛効果(Hilgard & Hilgard, 1994)

催眠鎮痛「効果あり」 鎮痛効果 33%以上
高催眠感受性 67%
低催眠感受性 13%
催眠鎮痛「効果なし」 鎮痛効果 10%以下
高催眠感受性 7%
低催眠感受性 56%


しかし、催眠感受性が催眠の臨床効果に大きな影響を与える要素であることは疑いのない事実である。
実験的に起こされた痛みに対しては、高感受性被験者の3人のうち2人(67%)が、約3割(33%以上)下げるのに対して、低感受性被験者では、7人に1人(13%)にすぎない。この結果は、高感受性でも3人に1人は鎮痛効果が得られず、低感受性でも鎮痛が必ずしも不可能でないことも示しているのである。すなわち、痛みのコントロールは被験者の動機や催眠感受性以外の様々な心理・状況要素が影響することを示唆している。 

(高石昇、大谷彰:現代催眠原論、金剛出版、2015.参照)