therapilasisのブログ

オンラインカウンセリングのセラピラシス が提供する情報発信

催眠感受性尺度の意義

催眠感受性尺度の意義

 

催眠感受性は他の人格特徴と同じように、個人差のあることが実験的に確認されており、感受性の測定手段を確立させることは一般の心理テストと同様に価値がある

臨床活動における催眠感受性測定の是非については、感受性の役割を不可欠とする立場からは、標準化された尺度の活用によって、クライエント一人ひとりに適した治療法を選択することが容易になると主張されている。また、ペカラは催眠感受性を測定し、その可能性を理解することが治療の動機づけになると述べている。

これに対して、催眠感受性測定に対して中立ないし否定的な立場として、ダイヤモンドは、催眠感受性尺度は全般的な催眠能力測定の指標となるが、実際の催眠治療で生じる反応には反映されないと論じている。エリクソン派のギリガンは、標準尺度で催眠感受性を測定することは、社交ダンスのフォックストロットを行う技量を見ただけでダンス能力全体を推察するようなもので、人それぞれ得意の種目には個人差があると酷評した。さらに、ロッシにいたっては催眠感受性の測定を有害無益とみなし、感性と人間性に富んだ治療者なら、催眠感受性の「客観性」を理由に、標準化された尺度をクライエントに強要し、退屈させるようなことは絶対にしないと主張している。

ヒルガードの同僚として初期のスタンフォード尺度の作成に貢献したワイツェンホッファーまでもが、「効果的な催眠療法には、こうした標準化された常時利用することは決して有効でない」と主張している。

また、臨床催眠家として著名なヤコブ催眠感受性は治療者とクライエントとの好ましい対人関係という条件のもとで増加するため、標準化された尺度によって得られた催眠感受性数値などは臨床的に意味を持たないと主張している。

 

筆者(高石)の見解としては、被験者の動機づけやラポールなどの関係性を含む文脈によて催眠感受性が大きく影響を受けることは、日頃の臨床経験から明瞭に観察するところであり、このような経験から、治療前の尺度の得点そのものは社会心理学的な視点から見て、最も促進因子が少なく、本来の特性を反映するものと考えられる。したがって、治療を選択するにあたって、この基本的催眠感受性あらかじめ知ることは治療者にとって無意味ではないスタンフォード催眠感受性尺度(SHSS)で約40%に見られる4点以下の低催眠感受性者には催眠療法が適しているとは考えない、というヒルガードの見解よりも、むしろ催眠適用の幅をもう少し広げても良いのではないかと思われる。催眠療法に強く動機づけられたクライエントでも、測定された感受性得点がきわめて低いものも確かに存在する。このような場合、一度念のため催眠誘導を試みても、他の治療法を提示することもできるので、これは催眠感受性尺度の有用性とみなすことができる。また尺度の数値は催眠治療のスタイル選択にも役立つであろう。むしろ問題とされるのは、標準化された催眠尺度利用の賛否が「催眠療法の技術(アート)か科学か」といった二元論に帰着することであり、これはナンセンスに過ぎない。催眠療法は技術(アート)であり、同時にまた科学でもあるからである

(高石昇、大谷彰:現代催眠原論、金剛出版、2015.参照)