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時間再構成法-①年齢退行

時間再構成法-①年齢退行

 

  • 1800年代から報告があるが、この技法が多く用いられるようになったのは、第一次および第二次世界大戦における心的外傷(戦争神経症、いわゆるPTSDに対してである。
  • 部分退行はクライエントが二重の意識状態にあり、退行時の情緒と成長してからの認知を合わせ持っている。完全退行(鮮明想起)では、二重の意識状態はなく、退行年齢に応じた情緒のみを体験する。
  • 完全退行時では、記憶、認知、知能テストで年齢に相応する反応を示し、子供の認知が再現されて、成人期の記憶が減退しているとの報告もあるが、多くの研究で認知機能や知能指数が退行した年齢よりは高いことが認められている。
  • しかし、心的外傷例で、意識化されることのなかった記憶や知識が回復したり、例えば、それまで日本語を解し得なかった日系アメリカ人が退行年齢に相応した日本語を正確にしゃべったという報告もある。一方、誘導的な質問や暗示により、記憶の間隙を作話や歪曲で巧みに埋める事例も報告されている。
  • このように催眠が記憶の回復を可能にする場合もあるが、不正確な情動を想起する場合もあるため、催眠によって得られた事実は常に検証が必要である。
  • 催眠退行の情緒・知覚生理的側面については、いまだ結論を得ていないが、情動的な側面への回復については注目する必要がある。
  • しかし、心的外傷後のクライエントにカタルシスを起こさせることは、それ自体が治療的であると考えるのは間違いである。不幸な出来事を再体験するだけでは助力となり得ない。心的外傷で歪められた自我があまりにも退行し、心的外傷の再体験によって混乱し恐怖に陥る危険がある。このときにはトランスを短縮し、支持的に話しかけ自我強化法を行うべきである。このとき激しい恐怖のためにラポールが失われたクライエントに対しては非言語シグナル、例えばクライエントの右肩をぎゅっと掴むなども有効である。
  • 近年、年齢退行に関連して、世界中で前世退行への関心が高まっている。しかし、厳密な統制研究の結果、前世退行の経験はクライエントの期待と術者からの暗示および要求特性がその本質であり(Baker, 1982)、しかもそ出典健忘とするのが最も適当な説明とされている(Edward, 1989, Harris, 1986, 大谷, 2008)。また、前世退行の治療的な問題点を吟味せずに、有用性だけを強調することは、あってはならない。

(高石昇、大谷彰:現代催眠原論、金剛出版、2015.参照)