精神病理・精神分析・人物
ヴィルヘルムグリーシンガー(Wilhelm Griesinger, 1817–1868) グリージンガーは、テュービングン、チューリッヒ、ベルリンの各大学の精神科教授を歴任した。 精神病を、自然哲学者や浪漫主義者や神秘主義者らの手から引きはなし、これを自然科学に基づいた…
催眠感受性尺度の意義 催眠感受性は他の人格特徴と同じように、個人差のあることが実験的に確認されており、感受性の測定手段を確立させることは一般の心理テストと同様に価値がある。 感受性の役割を不可欠とする立場からは、標準化された尺度の活用によっ…
催眠感受性 臨床催眠にとって重要な催眠感受性(hypnotizability)は、催眠被暗示性、催眠感応性とも呼ばれ、催眠暗示に対する反応能力(suggestibility)と定義される。 ヒルガードの研究によると、低感受性(10~15%)、中感受性(75~85%)、高感受性(…
サービンの役割理論 サービン(Theodore Roy Sarbin, 1911–2005) サービンは社会心理学の立場から変性意識説の非妥当性を最初に表明した。彼はミードが提唱した役割理論(the role theory)によって催眠を分析し、弟子のウィリアム・コウとともに、催眠現象…
アーヴィン・カーシュの反応期待説 アーヴィン・カーシュ(Irving Kirsch, 1943 -) カーシュによると、我々の行動は、これから一体どのような反応が起こるのかという期待感によって決定される。この最も極端な例がプラセボ効果であり、薬物成分が全くないの…
スパノスの方策的役割履行と課題志向空想 Nicholas Peter Spanos (1942-1994) バーバーの課題動機説は、弟子のスパノスによって、さらに進展する。 スパノスは、催眠反応とは与えられた指示に対する単なる同調や服従、または指示された課題に対する単純な動…
社会認知理論 変性意識を催眠の特徴とみなす状態論に対して非状態論は、催眠を特別な変性意識ではなく、被験者のおかれた状況要因と心理状態によって生じた行動ととらえる。 催眠の理論のなかで、非状態論の主流とされる社会認知理論は単一理論ではなく、複…
心理退行理論 フロイトは催眠を放棄したものの彼の弟子の中には催眠精神分析(hypnoanalysis)の発展に尽くした人達もいる。それは催眠理論の中では心理退行理論(psychological regression theory)と呼ばれている。 Merton Gill(1914-1994) Margaret Bre…
ヒルガードの新解離理論 アーネスト・ヒルガード(Ernest Hilgard, 1904 – 2001) 催眠による非意図的反応として、暗示によって腕が「勝手に」浮揚したり、眼瞼が「自然と」閉じたりするが、ヒルガードは心的解離によって生じると主張し、新解離理論を提唱し…
自己愛性神経症 フロイトは「リビドー理論と自己愛」で、彼の分析理論を早発性痴呆やパラノイアやメランコリーにまで及ばし、それらの発生を、リビドーの対象が自己に固着して自己愛となった結果として説明しようと試みる。従ってこれらの疾患を、彼は自己愛…
不安の問題 次の章「不安」は、フロイトの神経症論、ことに恐怖症にとって重要な問題である。 「不安の問題が、あらゆる最も重要な問題の集中する交差点であることは確かです。そしてこの問題は、それを解決すれば、私どもの心的生活全体の上に豊かな光が降…
自我欲動の役割 この辺から話は性欲動に対する自我欲動の重要さの説明に入る。 「・・・・ところでリビドーの欲求に対して抗議する勢力、すなわち病因となる葛藤における相手方の一方は何でしょうか。ごく一般的に言えば、それは性的でない欲動の諸力です。私ど…
神経症構造論の中核 フロイトの神経症構造論は、これから後の数章の中にその核心があるように思われる。ことに最初の「発達と退行の観点、病因論」がそうである。 「リビドーの発達にあたっては、一般病理学の学説と全く同じように、二つの危険を伴うことを…
ミルトン・H・エリクソンの方略的アプローチ ミルトン・エリクソン(Milton H. Erickson, 1901- 1980) エリクソンは1930年頃から斬新なパラダイムと技法を催眠に取り入れ、現代催眠を心理療法のメインストリームに合流させた。 彼は、催眠者にも被催眠者に…
固着、無意識、抵抗、抑圧 私は、特に注意を要すると私が考えるもの、フロイトの真意がはっきりわかると思われるもの、フロイドの思想のうち、従来見落とされがちであったと思われるものなどを以下に抜粋することとした。 「強迫神経症のもつこれらの症状、…
フロイトの精神医学批判 「・・・・ある人々は私の自己訂正をまったく知らず、すでに私にとって以前とは違う意味をもつようになっている主張を盾にとって、今日でも私を批判しております。・・・・自分の見解を三度三度変更した者は、おおよそ信用することができない…
フロイトの神経症の分類と命名 フロイトは神経症の第一群として感情転移神経症を立て、これは、不安ヒステリーと転換ヒステリーと強迫神経症の3型を含む概念だとする。そして彼は「ここで私が抑圧や症状形成や症状解釈に関して言っていることは、すべてこの…
精神分析に対する批判 フロイトの不屈な闘魂と確信と、それに従来の通念から全く離れた大胆な理論とは、すべての専門家を、彼に賛成か反対か、味方か敵かに、はっきりと区別してしまった。また永らく彼と行を共にしたにもかかわらず、意見の食いちがいが元で…
フロイトと内因性精神病 フロイトは、精神医学の中心課題でありながら、今なお本態不明のままである内因性精神病の症状にまで、そのリビドー学説による解明を試みた。 彼は、メランコリー患者の苦悩または自殺念慮とは、失われた、または背かれた性対象に対…
催眠感受性尺度の登場 André Muller Weitzenhoffer (1921-2004) Ernest Hilgard(1904-2001) 1959年ワイツェンホッファーとヒルガードによるスタンフォード催眠感受性尺度が作成され、その他に同様の尺度がいくつか作成され、これは必須の技法として推奨さ…
実証的催眠研究の始まり クラーク・ハル(Clark Leonard Hull, 1884 – 1952) 実験心理学の権威であったハルが、1933年催眠現象の統制研究をまとめた「催眠と暗示」という実験科学的研究の著書を出版した。当初は批判もあったが、米国心理学会会長を務めた彼…
フロイトの神経症論 フロイト(左)とジャネ(右) ジグムント・フロイトは、ジャネと共に神経症学を飛躍的に発展させたのみならず、深層心理学全般に未曽有の新生面を開拓して、その師たるシャルコーをはるかにしのぐ盛名を得た人である。 フロイトは最初、…
ジャネとフロイトの相違 ジャネの理論に対しては精神分析の側からの反論が起こった。精神分析派はジャネのいわゆる心理的緊張性の思想を認めることができず、またジャネが心理的緊張性の減弱と呼んだ障害を、精神分析の側は自我の減弱によるものと主張したか…
ジャネの心理的緊張と精神衰弱症 ジャネの業績の核心をなすものは心理的緊張(la tension psychologique)の学説である。 「ジャネの理論を理解する上に常に必要な概念は、精神の総合の能力という考えであろう・・・・それはすべての心的機能を統一し、より高次…
ジャネのヒステリー論 彼もシャルコーの門下生であって、その師の大きな影響の下に暗示や催眠術の研究を行なった。彼はヒステリーの心理的緊張の、心理学的、病理学的理論を打ち立て、それによって多くの精神状態を説明しようと試みたし、また精神衰弱症の概…
ババンスキーの説得可治症 ジョゼフ・ジュール・フランソワ・フェリックス・ババンスキー(Joseph Jules François Félix Babinski, 1857 – 1932) ババンスキーは長くシャルコーの下にあったから、その業績には神経病学的のものが多く、この方面で彼は不朽の…
ジャネとフロイトの催眠 ピエール・ジャネ ピエール・ジャネの人と生涯 - therapilasisのブログ シャルコーやベルネームにも師事し、非常に活動的な催眠療法家になり、催眠を解離現象ととらえ、ヒステリーとの類似性を指摘した。催眠状態のみで食事のできる…
サルペトリエール学派とナンシー学派の催眠 サルペトリエール学派の催眠シャルコーが率いるサルペトリエール学派の催眠法は、「大量刺激法」と呼ばれる過度の刺激を患者に与え、そのショックで催眠状態に誘導しようとするものである。例えば、中国のドラやア…
シャルコーのヒステリー研究と催眠 ジャン-マルタン・シャルコー (Jean-Martin Charcot、1825 – 1893) シャルコーは、多くの脊髄や脳の疾患の発見や記載によって不朽の業績を遺した近世神経学の始祖であるが、一方で、彼はそのヒステリー研究において、当…
ヒプノティズムの誕生③ ジェイムズ・ブレイド(James Braid、1795 - 1860) ブレイドはスコットランド人で、1815年エディンバラ大学で外科医の資格を取り、イギリスロイヤルカレッジのメンバーにもなっている。 1841年、ブレイドはマンチェスターで、フラン…