昔の三環系抗うつ薬に比べて、最近の薬は副作用が弱くはなっていますが、全くないわけではありません。
初期
- 嘔気、胃部不快、下痢、眠気、だるさ、口渇、ふらつき
- 不眠、不安、いらいら感、希死念慮、衝動性(特に24歳以下)
持続・維持期
- 体重増加、性機能障害(性欲減退)、無関心、無気力
中止時(中断症候群)
- めまい、脱力、嘔気、不眠、異常感覚など
副作用かと思っても自己判断で中止はしないで、医師に相談して下さい。
それぞれの抗うつ薬の副作用を、詳しく見ていきましょう。
三環系抗うつ薬の副作用
・抗コリン作用による口渇、便秘、麻痺性のイレウス(腸閉塞)、眼の焦点が合わない、ドライアイ、眼圧上昇(緑内障では禁忌)、排尿困難、尿閉(前立腺肥大では禁忌)、せん妄(意識が変容して、まとまりない言動が出現)
・抗ヒスタミン作用による眠気やふらつき、過鎮静
・心循環器系でも頻脈、起立性低血圧、心電図異常などが起こることがあります。
・過量服薬で致死的な経過をとることもあるので注意が必要です。
SSRI、SNRIの副作用
低用量で開始した場合には、4分の3は、副作用の出現はほとんどなく、1~2週間ごとに増量ができます。残りの4分の1は、低用量でも最初の1~2週間で副作用が出現し、10~15%の人は服薬を中断しますが、同じ用量で続けられれば、通常自然に治まります。
薬物相互作用
各抗うつ薬の肝代謝酵素CYPの阻害作用を示しますが、CYP分子種(1A2、2C9など)の阻害作用が強いほど、その分子種で代謝される薬剤の血中濃度を上昇させてしまうため注意が必要です。
消化器症状
・悪心、下痢、食欲不振、嘔吐、消化不良が多く、普通は一過性で、数週で消失。食事とともに服薬することで軽減することがあります。
・多くは初期に体重減少が起こりますが、3分の1は体重増加。パロキセチンは抗コリン作用もあり体重増加を起こしやすい。
性機能障害
・海外の報告では、50~80%という高頻度で出現するとの報告があります。
・用量依存性のオーガズムの阻害、性欲低下、勃起・射精障害
・当然うつ病の症状としても起こるわけですが、気分や意欲などが改善しても、出現している場合は副作用と考えて、薬物の減量、他の薬剤への変更が必要になります。
セロトニン症候群(Sternbachの診断基準1991)
・追加投与や投薬量の増加と一致して少なくとも以下の3つを認めます。
・①精神状態の変化(錯乱、軽躁状態)②興奮 ③ミオク ローヌス ④反射亢進 ⑤発汗 ⑥悪寒 ⑦振戦 ⑧下痢 ⑨協調運動障害 ⑩発熱
賦活症候群(activation syndrome)
・投与初期、あるいは用量変更時などにみられる中枢神経刺激症状です。
・不眠や不安、いらいらなどから希死念慮や自傷・自殺行為に至る敵意や攻撃性、衝動性、アカシジア(ソワソワしてじっとしていられない)、躁状態などがみられます。
・24歳以下の若年者では、とくに発現率が高いので、若年者のうつ病の場合、SSRI、SNRIを単独で用いる場合には、十分な説明と注意が必要です。イライラや焦燥感、希死念慮があるような若年者の場合には、初期からのベンゾジアゼピン系の抗不安薬を併用する場合もあります。
・出現時には、原因薬剤の減量や中止を行い、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、気分安定薬、非定型抗精神病薬、トラゾドン、ミルタザピンなどによる治療に切り替える必要があります。
離脱症候群
・薬剤の飲み忘れや中断、中止時に出現します。とくにパロキセチンやベンラファキシンのように半減期の短い薬剤を突然断薬するときに起こりやすい。
・めまい感、脱力、悪心、頭痛、反跳性うつ、不安、不眠、集中力低下、上気道症状、異常感覚、片頭痛様症状などが出現します。
・通常6週間以上服用していた場合に起こりますが、短期でも起こることがあります。
・3週間以内に消失するのが一般的ですが、症状がつらい場合には、再度服薬して、注意深く少量ずつ漸減してから中止する必要があります。
SSRI誘発性アパシー
・SSRIを長期に使用した場合に出現する無気力状態で、高用量服用している場合の方が出現しやすい。
・SSRIは、強迫症状などのこだわりを軽減しますが、その作用が強く出過ぎると、こだわりがなくなって、いろいろなことに無頓着になってしまいます。
・SSRIの減量や中止によって改善します。
カナダのガイドライン(CANMAT)における各種抗うつ薬の副作用プロファイル(参考)