1950年代以降精神科治療は薬物療法が中心になっていますが、それ以前はさまざまな身体療法が試みられてきた歴史があります。
発熱療法(マラリア療法)
- Wagner von Jauregg J., 1917, オーストラリア(ノーベル賞受賞)
- 神経梅毒の治療法として広く用いられました。
- 熱発後精神病の精神症状が改善されることは古くから知られており、Wagner von Jaureggは、丹毒、ツベルクリン、多価チフスワクチン、ブドウ球菌ワクチン、ヌクレイン酸ソーダなどを試行後創始したマラリア三日熱原虫を接種する治療法です。
持続睡眠療法
- Kläsi,J., 1920(ソムニフェン使用)
- 下田光造, 1922(スルフォナール使用)
- 睡眠剤を大量に用いて一定期間(15~20時間)眠らせる療法、昼間は食事ができる程度の深さの眠りで、2週間程度持続します。
- 適応:うつ状態、不安・興奮の強い場合、麻薬中毒禁断時
インシュリンショック療法
- Sakel,M., 1935, オーストリア
- 統合失調症の治療として、広く各国で行われました。
- インシュリン皮下注射で低血糖昏睡を起こさせます。1クールで20~30回の昏睡。
- 手技が難しく不注意による危険も少なくなく、実施に際しては熟練を要しました。
精神外科
- モニス術式:Moniz,E., 1935, ポルトガル(ノーベル賞受賞)
- 経眼窩術式:Freeman,W.とWatts,J.W., 1936, アメリカ
- 眼窩脳内側領域切除術(orbito-ventromedial undercutting):広瀬貞雄(日本医大)
けいれん療法
- カルジアゾールけいれん療法:Meduna,L.J., 1935, ハンガリー
- 電気けいれん療法(electroconvulsive therapy: ECT):Cerletti,U.とBini,L., 1938, イタリア
- 無けいれん性の修正型(modify)電気けいれん療法(m-ECT)
- ECT前後におけるドーパミン変化の検討
- うつ病の抗うつ薬治療では、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの順で効果が発揮されると言われていますが、ECTはおそらくドパミンを動かすのではないかと言われてきました。この研究結果は、ECTによって、右前部帯状回(Cg24)でドーパミンが増加して、その結果ダウンレギュレーションでドーパミンD2受容体の結合能が低下することを示しており、ECTがドーパミンを増加させることを明らかにしました。
- mーECTの実際