アルツハイマー病(AD)の診断基準
- NINCDS-ADRDA(1984)アメリカの国立神経障害・脳卒中研究所(NINDS)とアルツハイマー病・関連障害協会(ADRDA)の合同作成
- ICD-10(1993)WHOの国際疾病分類
- (DSM−Ⅳとの相違点)
- 記憶力減退
- 判断や思考に関する能力の低下、情報処理全般の悪化
上記2つが6ヵ月間存在 - 情緒異変性、易刺激性、無感情、社会的行動の粗雑化
- 亜型分類:早発生、晩発生、非定型あるいは混合型
- DSM-IV-TR(1994)アメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル
上記の診断基準は、最も一般的に使用されてきた基準で、生存中にADを診断するために、発症と進行の状況、記憶障害と認知の欠損の存在、他の身体疾患や脳器質性疾患の除外に基づいていました。問題点として、AD以外の認知症のタイプを区別できない、バイオマーカーの結果や遺伝学的情報が診断に含まれていないことが挙げられます。
ADは、臨床症状が出現する20年前から神経病理学的変化が起こることが明らかになり、多様な臨床表現型を有する複雑で異質な進行性の疾患であり、診断的に検証されたバイオマーカーを用いた早期診断が、早期介入のために必要と考えられました。
- IWC(2007, 2010)国際ワーキンググループ
- NIA-AA(2011)米国国立老化研究所とアルツハイマー協会
- ADは、認知症であること(基準 A)、潜行性の発症と緩徐な進行(基準 B)で典型的な現れ方は健忘型ですがまれに視空間型とロゴペニック(logopenic:言語減少)失語型、「確実な(probable)」と「疑いのある(possible)」に分類(基準 C)と他の疾患の除外(基準 D)に基づいて診断されます。アミロイドPETや脳脊髄液中のAß42 の低下の診断的意義は記載されましたが、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、プレセニリン(PSEN)1/2、APOE 遺伝子ε4の遺伝学的解析や脳脊髄液総タウ、リン酸化タウ、MRI による海馬・側頭頭頂葉皮質萎縮、FDG-PET による側頭頭頂葉の糖代謝低下は今後の臨床応用とされました。
- 症状の始まりは通常70~80代、40~50代の早発型は、しばしば既知の原因の突然の変異と関連があります。
- 外傷性脳損傷は発症の危険要因、また年齢は最も強い危険要因、遺伝的感受性アポリポ蛋白ε4多型はホモ接合体の人で危険を増大させ発病年齢を引き下げる。ダウン症(21トリソミー)の人は中年まで生存するとADを発症する。多数の血管性の危険要因はADの危険度に影響し、脳血管性の病理を増大させたり、ADの病理に直接作用するかもしれない。
- IWC-2(2014)国際ワーキンググループによるAD先端研究診断基準(厳密な診断と研究目的)
(参考)
ADの原因遺伝子
- APP、PSEN1、PSEN2
感受性遺伝子(リスク因子)
- APO-E
- APO-E ε4など複数の型があります。
- 強力なリスク因子ですが保有していても実際に発症しない事例が一定数存在します。そのような事例では防御的な遺伝要因、個人の生活習慣や環境要因の影響も考えられます。
アミロイドPET