ラメルテオン(ロゼレムⓇ)
- メラトニン受容体アゴニストで、視交叉上核に存在するメラトニンMT1/MT2受容体に作用します。
- MT1: 視交叉上核神経活動の抑制や睡眠促進の効果があり、結果的に睡眠の質を改善し深くします。
- MT2: 位相変動作用を持ち、後方にずれた睡眠位相を前方に移動させます(睡眠の後退などを改善)MT2アゴニスト作用だけを期待するなら4分の1か2分の1錠でも可。また服薬の時間も夕方でも可。
- 睡眠-覚醒リズムに働きかけ、鎮静作用や抗不安作用によらない睡眠をもたらします。
- 優れた睡眠導入効果が認められ、全睡眠時間の改善が認められています。
実際の臨床経験では、服薬して数日後くらいから(1週間程度かかることも)入眠しやすくなることが多い。 - 依存、乱用、退薬症候、反跳性不眠が生じにくい。
- 承認時までの副作用は1,864例中の194例(4%)。
- 主な副作用は傾眠(4%)、頭痛(1.0%)、倦怠感(0.5%)、浮動性めまい(0.5%)です。
- 重大な副作用としてアナフィラキシ一様症状(蕁麻疹、血管浮腫等)があらわれることがあります。
- SSRIのフルボキサミンとの併用は禁忌です。
- 基本的には睡眠に入るための身体面での休息態勢を作る薬剤で、深部体温低下などに1時間程度かかるため、就床1-2時間前に投与する場合もある。
ラメルテオンによる睡眠覚醒リズムの変化
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ラメルテオンには鎮静作用はなく、睡眠と覚醒リズムを整えることで、夜になると眠れる状態に、朝には覚醒の状態にする、いわゆる自然な眠りを導く薬剤です。
スボレキサント(ベルソムラⓇ)
- オレキシン受容体拮抗薬で、脳内の覚醒維持系を抑えることで生理的な睡眠の誘導作用を示す薬剤です。
オレキシンとは
- オレキシンは、1998年に、柳沢 正史(筑波大学教授)、櫻井 武(金沢大学教授)らによって発見された神経ペプチドです。
- 当初、摂食行動を制御するものと考えられていましたが、ナルコレプシーがオレキシン欠損によって起こることが明らかになり、覚醒・睡眠制御の役割が注目されました。
- 睡眠と覚醒は、「睡眠システム」と「覚醒システム」の二つのシステムが相互に働くことによって調節されています。
- オレキシンは、視床下部の細胞で産生され、覚醒の調節に中心的な役割を果たしていることがわかりました。
スボレキサントの作用機序
GABAとオレキシンの役割
スボレキサントの特徴
- 最高血中濃度到達時間は1.5時間ですが、食直後だと1時間延長
- 半減期は10時間
- 臨床試験の結果から、入眠障害と睡眠維持障害の明らかな改善を認め、薬剤耐性や休薬による反跳性不眠は認められず、高齢者に対しても有用であることが示されました。
- 市販後調査による副作用としては、傾眠、悪夢、中期不眠、頭痛、不動性めまい
せん妄予防効果
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ラメルテオンとスボレキサント(Hatta K, et al, 2014, 2017)は、せん妄の予防効果が報告されており、高齢者や身体疾患合併の患者さんでは、せん妄予防としても有用であるが、せん妄が起こってしまった場合には無効。