統合失調症の治療ゴール
- リカバリー(回復)を見据えた治療が必要であり、そのためには症候学的な寛解が最低限必要です。
- 寛解は、幻覚妄想などの症状が軽快して、6ヶ月以上持続することが必要です。
- リカバリーとは、最高の質のケアと情報が患者とその家族に提供され、人々が暮らし、働き、学び、社会に十分に参加することができるようになるプロセスを指します。
ある人にとっては、たとえ障害があっても充実した生産的な人生をおくれることであり、別の人にとっては、症状の軽減や完全寛解のことです。 - 患者がリカバリーすることが一般に認知されることで、精神疾患をめぐるスティグマ(偏見)が軽減され、精神疾患のある人全てリカバリーへの希望を抱かせることができるようになります。
共同意思決定(Shared Decision Making: SDM)
(Hasan A, et al.: World J Biol Psychiatry 14, 2013.)
- 十分な情報提供や患者の個人的なゴールを理解しながら、患者ならびに(もし患者が同意すれば)その家族や親せき等と長期治療におけるゴールについて話し合う必要がある。
- SDMのプロセスを経て同意に至ってから、治療計画は策定され実施されなければならない。
- 再発予防、症状抑制や主観的満足度ならびにQOLの改善を念頭に、薬物治療は個々の患者のニーズや嗜好に合わせてテーラーメイドされなければならない。
統合失調症に対する早期介入
- 精神病未治療期間(Duration of Untreated Psychosis: DUP)
- 予後決定因子でありその短縮が重要
- 発症から治療開始までのタイム・ラグのことで、平均DUPは各国の研究とも1~2年
- 治療臨界期(Critical Period)
- 発症から2~5年間が治療の成否を分ける
- この期間に精神症状・社会機能等が悪化→その水準で安定化→高率の再発
- 発症危機状態(At Risk Mental State:ARMS)
- 適切な介入によって、ARMSから精神病への移行を防いだり遅らせたりすることができるようになりつつある
- 一次予防や二次予防とも異なる、いわば1.5次予防、精神病につながりやすい症候を少しでも早く見出し、適切な介入により本格的発症を頓挫させる
自立を支援する薬物療法
- 自立した生活を営むために、最小限の薬剤で最大限の活動ができるような治療
- 可能な限り単剤低用量
- 薬剤の使用は患者さんの自立した生活を助ける為のものであり、症状を完全に取ることが目的ではない
- 自立した生活を可能にする最低用量を推奨する
- 自立した生活を継続する為に再発をさせない治療を提案する
- 全ての薬剤は副作用があることを忘れない