ADHDは発達障害であり、成人になって突然発症するものではありません。しかしADHDであるにもかかわらず、自分自身の特性や性格として捉えてしまい、治療や支援を受けずに、行動上の問題や二次的に併発した精神症状によって社会的な不適応を起こしていることも少なくありません。小児期から成人期にへの移行が、50~70%に及ぶとの報告もあります。成人期ADHDについては、疾患としての理解が重要です。また、小児期と同様に心理社会的療法(認知行動療法や精神療法)と薬物療法とともに生活支援や社会支援が検討される必要があります。
ADHDの成長過程における症状(例)
(注意欠如・多動性障害-ADHD-の診断・治療ガイドライン、 じほう, 2008. 成人期ADHD診療ガイドブック, じほう, 2013)
乳児期
- よくぐずり泣く、睡眠が不安定、発声が乏しい、抱かれるのを嫌がる、なだめにくい、あやしたりほほえみかけても喜ばない、など
幼児期
- はしゃぎすぎ、熱狂的、次々と遊びが移る、レストランでじっとしていられない
- 指示に従わず、かんしゃくが激しい、反抗的行動を繰り返す
- 保育園や幼稚園などの集団で、自分がけがをする、他の子供に危害を与える、モノを壊す、など
学童期
- 授業中の離席やおしゃべり、指名される前に質問に答える
- 順番を待つのが難しい
- 与えられた課題に最後まで取り組めない
- 朝の身支度などの時間管理が苦手、遅刻や忘れ物が多い
- 学習に継続的に取り組めない
- 仲間関係で孤立
- 反抗的挑戦的言動 など
青年期
- 中核症状(特に多動性・衝動性)そのものは目立たなくなる
- 学業成績の不振、自尊感情の低下
- 個人内での葛藤や周囲との軋轢、対人関係の問題
- 抑うつ気分、かんしゃく、怒り
- スリルを求める逸脱行動
- 非公的行動、触法行為 など