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北総メンタルクリニック 院長の情報発信

ASDの関連特徴と併存疾患

ASDの関連特徴

  • 知能の障害や言語の障害も併せもっています。
  • 平均的あるいは高い知能をもつ人でも、能力のプロフイールにむらがあり、知的および適応機能の技能間の乖離が大きいことが多い。
  • 奇妙な歩き方、不器用さ、およびつま先歩きなどの他の運動徴候の異常を含む運動面の欠陥がしばしば存在します。
  • 自傷を認めることがあり、秩序破壊的/挑発的な行動は、知的能力障害を含む他の疾患よりも頻繁に認めます。
  • 不安や抑うつを呈しやすい。
  • 緊張病様の運動行動に発展することもあります。

 

症状の経過

  • 症状は典型的には生後2年目の間に気づかれますが、発達の遅れが重度であれば1年以内にみられることもあるし、症状がより軽微であれば2年以降に気づかれることもあります。
  • 行動的特徴は、乳幼児期に初めて明らかになりますが、生後1年の間に対人的相互反応への関心の欠如を示すこともあります。生後2年の間にしばしば社会的行動または言語の使用における緩徐または急速な悪化を伴うような発達の停滞や退行を経験する子どもがいます。
  • 最初の症状は言語発達の遅れであることが多く、しばしば社会的関心の欠如または普通でない対人的相互反応(例:人の顔をまったく見ないで手を取る)、奇妙な遊びの様式(例:おもちゃを持ち歩くが決してそれで遊ばない)、および独特なコミュニケーション様式(例:言葉を理解しているのに名前の呼びかけに反応しない)を伴っています。
  • 生後2年目に奇妙で反復的な行動や標準的な遊びの欠如はより明らかになってきます。
  • 生涯を通して学習や代償をし続けることが一般的です。
  • 症状は小児期早期や学童期早期に最も顕著であることが多く、少なくともある領域では、発達的進歩が一般的に小児期後期にみられます。
  • ごく一部の人が思春期に行動面での悪化を認めますが、他のほとんどの人は改善していきます。
  • ごく少数で優れた言語および知的能力をもち、特殊な関心や技能に合うような適所を見つけることができるような人のみが、成人期に自立した生活や労働をするようになります。
  • 障害の程度が軽度の人はより良好に自立して機能することができるかもしれない。しかし、障害の程度が軽い人であっても、社会的に初心で脆弱であり、実務的な要求を援助なしで行うことは困難であり、不安や抑うつを呈しやすい。
  • 成人期では人前でその困難さを隠すために代償的な戦略や対処法を用いていますが、社会的に受け入れられるように表面を取り繕うことのストレスや尽力に苦しんでいます。

 

年代別特徴

幼児期        

  • 周囲に興味を持たない傾向
  • 言語的・非言語的コミュニケーションの発達の遅れ
    • 他者の関心の方向を追ったり自分の関心事を他者に示して共有を促す「共同注意」が遅れる
  • 強いこだわり

児童期

  • 集団になじめず孤立しがちになる
  • 不注意、多動、衝動などのADHD症状の併存(5-70%)
  • 比喩や冗談が理解できず、言葉をそのまま受け取る
  • 臨機応変に対応できず、作業なども他児と一緒に終了できない
  • 限定された興味は持続し、ときにパニック

学童期

  • ファンタジーへの没頭
  • 周囲に対する過敏さ
  • からかいやいじめの対象から、自尊心の低下、被害感、無力感

青年期以降

  • それまでの特徴が持続
  • 独特の認知や周囲と同じ感情を共有できないため孤立しがちであるが、大きなストレスがなければ適応
    • Wingの積極奇異型、孤立型より受動型が全体的な適応が比較的良好
  • 学校や職場での不適応、家庭内暴力や近隣への迷惑行為、社会的引きこもりなどで事例化することもあります。

ASDの併存疾患

  • ASDでは全体の70~80%に何らかの併存疾患
  • 9~13%にうつ病、3~6%に双極性障害が併存
    • 表情の乏しさ、他者への関心の低さ、興味関心の限、受け身型の特性をうつ症状と見誤ったり、反対にうつ病を見逃したり、その重症度を見誤ったりする。
    • 自身の状態を客観的にみることが困難、言語理解や感情を言語化して伝えることが不得意で、精神状態をうまく伝えられない。
    • 情動コントロールができずパニックになった状態を軽躁と捉えてしまうこともある。
  • 併存疾患への治療とともに、発達特性への評価、適切な支援や環境調整は欠かせない。
    (高梨淑子, 宇野洋太:精神医学62(7), 967-976, 2020.)