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メダルド・ボス

メダルド・ボス(Medard Boss、1903- 1990)

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anthonystadlen.blogspot.comより)

 

メダルド・ボスは、スイスに生まれ、チューリヒ大学を卒業し、以後、精神医学、とくに精神分析と現存在分析の立場からの研究を続けた。1974年にはわが国にも来訪し、各地で講演を行っている。

スイスという国、とりわけチューリヒは独自の雰囲気をもっており、文化的にもスイス特有の伝統をもちながら、ドイツのグルマン文化、フランスやイタリーのラテン文化、さらには北アメリカおよび中南米にもひろく開かれている。チューリヒ・スピリットと呼ばれる開放的な雰囲気の中にあるチューリヒ大学精神医学教室の初代の教授はフォレルであり、その三羽鳥の弟子は、精神分裂病の名称と疾病概念の創始者オイゲン・プロイラー、精神診断法のテストの創始者ロールシャッハおよびフロイトとともにアメリカの力動精神医学の基礎を築いたアドルフ・マイヤーであったという。これを見ただけでも、チューリヒ精神医学の底知れない深さを感じさせる。

ボスはこのような雰囲気の中で精神医学研究を志し、チューリヒ大学卒業ののち、パリ、ウィーン、ロンドン、ベルリンで精神医学を学び、1920年頃からチューリヒにもどって、プロイラーのもとで精神療法から出発した精神医学研究を続け、1929年チューリヒ大学講師、同大学精神療法訓練部長を経て、1952年に同大学教授に就任した。チューリヒにもどってからは、直接ないし間接にユングおよびビンスワンガーの影響が強いが、晩年はハイデガーの現存在分析論に基礎づけられた精神医学的現存在分析を樹立することに努めた。

ボスの名前は、英語で書かれたものを含めて数冊の著書や、国際医学精神療法学会の会長職などをとおして、またビンスワンガー亡きあとの、もっとも正統の現存在分析者として知られている。またボスの足跡はヨーロッパ、イギリス、インド、インドネシア、日本、北米のみならず中南米にまで及んでおり、彼はまさしく開かれたチューリヒ・スピリットの典型的な持ち主であった。彼の精神医学的業績も性的倒錯の事例研究をとおしての現象学的・人間学的精神病理学研究、フロイトのみならずユングからも深く影響を受けた夢分析、心身医学的知見に基づく現存在分析、インドという異種文化にわけ入った体験をとおしてのトランス文化精神医学的省察ハイデガー哲学についての本格的理解をとおしての現存在分析概論など、多岐にわたっている。