therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

パニック症/パニック障害

従来診断の不安神経症に相当しますが、1980年のDSM-Ⅲ以降は、パニック障害という診断が浸透し、DSM-5からパニック症という障害→症への病名変更がなされています。 パニック症/パニック障害(Panic disorder)の診断(DSM-5)抜粋 繰り返される予期しないパ…

神経症(ノイローゼ)とは

神経症(ノイローゼ) 神経症については、ドイツ語のノイローゼ(Neurose)が、一般的にもよく使われていると思いますが、1980年アメリカ精神医学会の診断分類であるDSM-Ⅲで、神経症という用語を廃したため、現在、診断名として用いられることは少なくなって…

REM睡眠行動障害

REM睡眠行動障害(REM Sleep Behavior Disorder:RBD) レム睡眠中に起こる夢体験に一致した夜間異常行動で、寝室周りの物を壊わしたり、ベッドパートナーに外傷を負わせることもあります。 刺激による覚醒は速やかで、夢の再生は可能です。 有病率は0.38~0.…

周期性四肢運動障害

周期性四肢運動障害(Periodic Limb Movement Disorder :PLMD) 入眠中の不随意運動(つま先や足首がピクピク、ひざ蹴り様動作、ひじの曲げ伸ばしなど)と日中の眠気 以前は夜間ミオクローヌスと呼ばれていました。 浅いノンレム睡眠の時に多く、深いノンレ…

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

レストレスレッグス症候群(Restless Legs Syndrome:RLS) 主に下肢に不快な症状(むずむず感、ほてり、むずがゆい、何かが這うような感覚など)を感じて、寝付けなかったり、熟眠感が得られなくなる病気です。 女性が男性の5倍、加齢とともに有病率が増加…

睡眠時無呼吸症候群

中高年で増加する睡眠障害について、いくつか説明したいと思います。 まずは、夜間無呼吸になって、熟眠が得られず、日中眠気が出てしまう睡眠時無呼吸症候群についてです。 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS) 10秒以上の無呼吸が一晩(7時間…

新しい睡眠薬、ロゼレムとベルソムラ

ラメルテオン(ロゼレムⓇ) メラトニン受容体アゴニストで、視交叉上核に存在するメラトニンMT1/MT2受容体に作用します。 MT1: 視交叉上核神経活動の抑制や睡眠促進の効果があり、結果的に睡眠の質を改善し深くします。 MT2: 位相変動作用を持ち、後方にずれ…

現在の主要な睡眠薬

理想の睡眠薬 入眠困難に効果がある 睡眠維持困難に効果がある 翌日への持ち越し効果がない 耐性、依存性、離脱症状がない 日中の機能を改善する 数多くの睡眠薬がありますが、不眠症患者さんのニーズは十分に満たされていません。 不眠症治療の歴史 ベンゾ…

向精神薬の処方適正化

向精神薬多剤投与に対する処方の適正化 向精神薬については、いままで何種類もの同様な薬剤の多剤投与が問題とされてきました。本来、処方権は医師にあるわけですが、なかなか改善がされないということで、厚労省は保険請求の算定料を引き下げるという形で、…

不眠症の非薬物療法

睡眠衛生指導の実際 (厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費 睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班, 平成13年度報告書より) 不眠症の人は、安易に睡眠薬に頼らず、まずは以下を試してください。 特に高齢者の場合、例えば4-5時間の睡眠…

睡眠の基礎知識

睡眠医学の歴史 1929年 ドイツの精神科医ハンス・ベルガーがヒトの脳波を記録 1953年 レム睡眠の発見 1965年 ピックウィック症候群のポリグラフの記録 1972年 視交叉上核が生体時間の発信中枢であることを発見 1999年 オレキシンとナルコレプシーの関連性が…

不眠症とは

不眠症の定義 毎晩の実際の睡眠時間の長短にかかわらず、患者自身が睡眠に対する不足感を訴え、身体的、精神的、社会的に支障がある状態 睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)における不眠症の全般的診断基準 A.睡眠の質や維持に関する訴えがある B.訴えは適切…

認知症の予防

認知症の予防 趣味を持ち、仲間を作り、適度な運動を続ける。 ストレスはためない。 魚、緑黄色野菜を腹八分目。 ポリフェノールを含む緑茶と赤ワインを飲み、食後に果物を摂る。 高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満やうつがあれば治療する。 一日30分の昼寝…

せん妄の薬物治療

せん妄薬物治療の原則 原因の除去が重要で薬物療法は対症療法 できる限り単剤治療を目標 改善が得られたら速やかに中止を検討 薬物の力価や用量にもよるが、半減期が短い薬剤の方が、翌日の過鎮静などが少ない可能性 過活動型せん妄で、夜間の睡眠確保と興奮…

せん妄とは

せん妄 一般的には身体疾患を背景とした急性で可逆的な、意識水準が変化した状態です。脳血管障害や認知症、あるいは高齢者などでは、脳の脆弱性がありますので、身体的・環境的な負荷が加わると出現しやすくなります。 せん妄の症状 昼夜逆転傾向 日時・場…

BPSD(行動・心理症状)の治療

BPSDに対する治療の原則 まず治療が必要なBPSDかを検討 本人にとって苦痛や負担 になっている場合 介護者や家族の負担になっている場合 BPSD原因の検索 身体疾患 併発症の治療薬剤 環境・状況(家族関係、介護者の誤った対応など) 原因に対する治療を優先 …

認知症の薬物療法

認知症の薬物療法としては、現在、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬が3剤、NMDA受容体阻害薬が1剤の計4剤があります。いずれも認知症の中核症状の進行抑制作用がありますが、BPSDに対してはAche阻害剤が賦活系、NMDA受容体阻害薬が鎮静系です。副作…

認知症の非薬物療法

認知症の非薬物療法 非薬物療法は、認知症の人の混乱や不安を取り除き、和やかな人間関係と生活の場をもたらすことを目的に行われますが、BPSDが軽減され、介護も円滑に進み、介護者にも余裕が生まれます。いろいろな働きかけによって昼間の覚醒度が上がり不…

認知症のケア

認知症の治療の基本 認知症のケア 認知症の人が体験しているこころの世界を理解することが基本 認知症の初期に記憶障害が出現して、「思い出そうと思っても思い出せない」、「自分が何をしていたのかがわからなくなる」ので、不安と混乱でいっぱいになります…

認知症診断の実際

認知症診断の流れ 問診と診察 いつごろからどんな症状がみられて、どんなことで困っているかなど 今までにかかった病気やけが、飲んでいるお薬について 運動まひ、手足のしびれ、言語障害などの有無、飲酒歴など 血液検査、全身検査で、他の疾患などがないか…

3Dの鑑別

3Dの鑑別 認知症(Dementia)、うつ病(Depression)、せん妄(Delirium)の鑑別は、非常に重要です。 認知症とうつ病(仮性認知症)については、以下で詳しく説明しましたが、うつ病の場合には抗うつ薬治療で改善しますので、その鑑別は重要ですが、必ずし…

アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の鑑別

脳細胞の変性、消失により認知機能が低下するのがアルツハイマー型認知症です。 一方、脳梗塞や脳出血などの脳卒中後には、認知機能が低下する場合があり、脳血管性認知症と言われています。 認知機能が低下する点は共通ですが、成因や症状などは異なります…

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

長谷川和夫先生(認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授)が作成されたHDS-Rは、最も汎用されている認知症の評価スケールです。 作成者の長谷川先生(89歳)が自ら認知症になったことを公表して、ありのままを受け…

前頭側頭型認知症

認知症にはアルツハイマー病を中心とする変性性認知症と血管性認知症があります。アルツハイマー病とレビー小体型認知症について記載しましたが、もう一つ重要な変性性認知症が前頭側頭型認知症です。 前頭側頭型認知症(Front-temporal Dementia: FTD) 昔…

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies: DLB) コマーシャルでも有名な小阪健司先生(現横浜市立大学名誉教授)が発見。小坂先生は認知症の20%がDLBだと主張しており、ADに次いで多い認知症です。小坂先生はとっても気さくな先生で、私の恩師の故…

アルツハイマー病の診断

アルツハイマー病(AD)の診断基準 NINCDS-ADRDA(1984)アメリカの国立神経障害・脳卒中研究所(NINDS)とアルツハイマー病・関連障害協会(ADRDA)の合同作成 (DSM−Ⅳとの相違点) 認知症を神経心理テストで確認 発症が40~90歳 診断を支持する所見:CTで…

アルツハイマー病の経過と症状

アルツハイマー病の経過と症状変化 認知症の中核症状とBPSD 中核症状(記憶障害、認知障害、人格変化) 程度の差はあれすべての患者さんにみられます。 疾患の進行とともに悪化します。 神経細胞の脱落にともなう能力の喪失です。 BPSD(精神症状・行動障害…

軽度認知障害とは?

軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI) 自覚的なもの忘れ(記憶障害)の訴えと家族によるその確認 年齢に比し記憶力が低下→絶対的低下ではなく個人の以前の状態に比べて低下がみられる状態 記憶以外の全般的な認知機能はおおむね正常 運転や家計な…

認知症の気づきのポイント

認知症とは? 簡単に定義としては、 いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知障害(記憶能力、思考判断力、言語機能などの障害)があるために、社会生活に支障をきたすようになった状態 老化と認知症のもの忘れの違い 人の名前が思い出…

2025年認知症が700万人!

わが国における認知症の疫学調査 全国10市町における65歳以上の住民計約9000人を対象におこなわれた厚生労働省研究班の大規模研究(H23-24年度)によれば、2012年時点の65歳以上の認知症の有病率は15%であり、全国の認知症高齢者数は約462万人と推計されま…