therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ASDの関連特徴と併存疾患

ASDの関連特徴 知能の障害や言語の障害も併せもっています。 平均的あるいは高い知能をもつ人でも、能力のプロフイールにむらがあり、知的および適応機能の技能間の乖離が大きいことが多い。 奇妙な歩き方、不器用さ、およびつま先歩きなどの他の運動徴候の…

自閉症概念の変遷

自閉症概念の変遷 Kannerの情緒的接触の自閉性障害(1943年) Leo Kanner(1955)Wikipediaより 他者との情緒的接触の重篤な欠如 同一性保持への強迫的願望 言語発達の遅れ 1950年代のアメリカで精神分析の影響を受け自閉症に関する心因論が成立 冷淡な両親…

ASD(自閉スペクトラム症)の診断

発達障害は、脳の先天的な機能的・器質的原因によって引き起こされた発達に関する障害の総称です。その特性は生涯にわたって持続しますが、症状は年齢とともに変化し、適応の程度も、環境とのかかわりや養育の在り方、療育などによって著しい幅が生じます。…

ADHDの病態仮説と治療

ADHDの病態仮説 遺伝要因と環境要因 ドパミントランスポーター遺伝子とドパミン受容体D4遺伝子の多型との関連性が示唆されています。 妊娠中の母親の喫煙(一部は一般的な遺伝的危険性を反映)、乳幼児期の鉛の曝露との関連が指摘されています。 低ドパミン…

ADHDの併存疾患と鑑別診断

ADHDの主症状である不注意、多動性、衝動性はいずれもADHD固有の症状とは言えません。多くの精神疾患で同様な症状が出現します。一方で、さまざまな精神疾患の背景障害として、あるいは全く独立して併存しているADHDを見逃さないようにすることが必要です。…

ADHDの成長過程における症状

ADHDは発達障害であり、成人になって突然発症するものではありません。しかしADHDであるにもかかわらず、自分自身の特性や性格として捉えてしまい、治療や支援を受けずに、行動上の問題や二次的に併発した精神症状によって社会的な不適応を起こしていること…

ADHDの診断

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害の診断(DSM-5抜粋) (Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder) A.(1)および/または(2)によって特徴づけられる、不注意および/または多動性-衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなつているもの:…

うつ病の分子神経生物学

うつ病の分子神経生物学 (Krishnan V, Nestler EJ. The molecular neurobiology of depression. Nature 2008; 455: 894–902.) うつ病の神経回路 情動制御は、視床、扁桃体、海馬を含む大脳辺縁系と背外側前頭前野、眼窩前頭皮質、前帯状回を含む前頭前野が…

統合失調症の回復期対応と再発予防

回復期・維持期に行われること 症状が改善、十分な睡眠も取れるようになります。 入院患者の場合、退院に向けてリハビリテーションを行います。 外来患者の場合、デイケアに通院するなど、社会復帰を目指したプログラムを実施されます。 生活リズム構築の妨…

抗精神病薬の副作用

神経学的副作用 パーキンソニズム・最もよくみられる可逆性の運動障害。加齢とともに出現率は増加。抗コリン性抗パ薬にて治療。 急性ジストニア・若年者に多く,数時間から数日の間に自然軽快することが多い。抗コリン性抗パ薬やジアゼパムにより治療。 アカ…

統合失調症の治療薬

第1世代抗精神病薬(FGA)の主なもの 作用機序 ドーパミンD2受容体阻害作用 力価 低力価薬物は、鎮静、起立性低血圧、抗コリン作用を出現させやすい。 高力価薬物は、錐体外路症状を出現させやすい。 第2世代抗精神病薬(SGA) 現在第1世代抗精神病薬に変わ…

統合失調症の治療設定

統合失調症の治療ゴール リカバリー(回復)を見据えた治療が必要であり、そのためには症候学的な寛解が最低限必要です。 寛解は、幻覚妄想などの症状が軽快して、6ヶ月以上持続することが必要です。 リカバリーとは、最高の質のケアと情報が患者とその家族…

統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群の診断

統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群(DSM-5) (Schizophrenia Spectrum and Other Psychotic Disorder) DSM-5の統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群に含まれるのは、統合失調症、他の精神病性障害、統合失調型パーソナリ…

統合失調症の症状・従来病型・経過

統合失調症の症状 Bleulerの基本症状(Bleulerの4A) 連合(Association)の弛緩 両価性(Ambivalent) 感情(Affect)の表出障害 自閉(Autism) Schneiderの一級症状 思考(考想)化声:自分の考えが声になって聞こえる 問答形式の幻聴 自分の行為を批判…

統合失調症の概要

統合失調症の概要 現在、昔のような古典的で典型的な統合失調症は、少なくなり、一部を除いては、軽症化と症状の多彩化が認められ、新しい治療薬の登場もあり、多くが社会復帰できるようになっています。 狭義の概念 主として思春期に発病し、特徴的な思考障…

性同一性障害から性別違和へ

DSM-Ⅳでは、性同一性障害(Gender Identity Disorder: GID)という診断名は、異性への同一化が強調されていましたが、2013年のDSM-5で性別違和(Gender Dysphoria: GD)に変更され、性別の不一致(違和感)という現象が強調されることになりました。 つまり…

わが国における性同一性障害医療の歴史的概観

わが国における性同一性障害医療の歴史的概観 (日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会より抜粋) 1969年「ブルーボーイ事件」 性転換手術をした産婦人科医が優生保護法違反で有罪。 性同一性障害者に対して性別適合手術を行ったわけですが、判決で…

抗うつ剤神話の憂うつなジレンマ

抗うつ薬は、うつ病に対してどこまで効果があるのでしょうか? Newsweekの2010年3月10日号で、「抗うつ剤神話の憂うつなジレンマ」という記事が載せられました。 (Kirsh I. et al. PLoS Med., 2008). 英国ハル大学のアーヴィング・キルシュ教授らの研究チ…

がんとうつ病

がんとうつ病 がんの告知や再発、病状進行などのストレスからうつ病や適応障害が起こります。 がん患者におけるうつ病有病率は、13~20%(Lancet Oncol 12, 2011) うつ病になると死亡リスクが、1.25倍(Cancer 115, 2009) 「がん=死」を意識しますので、…

不安障害とうつ病の併存

不安障害患者におけるうつ病の併存率(生涯) パニック障害、強迫性障害、社会不安障害等の不安障害は、うつ病の併存率が高い疾患です。 うつ病患者における不安障害の併存率 アメリカの疫学調査National Comorbidity Surveyによると、うつ病患者さんの58%…

心筋梗塞とうつ病

心筋梗塞後のうつ病の頻度 心筋梗塞を起こした患者283名に対して、梗塞発症後8~10日目に抑うつ状態のインタビュー調査を実施 心筋梗塞後には、軽症を含めると45%もの人がうつ病を併発します。 うつ病の有無による心筋梗塞後の予後 うつ病を合併した心筋梗…

糖尿病とうつ病

糖尿病患者のうつ病有病率 糖尿病とうつ病の併発について調べた39の研究をメタ解析により統合した結果 糖尿病患者のうち、うつ病を併発している人は4%、うつ病を併発している疑いがある人は31.0% 糖尿病とうつ病は互いの発症・経過・転帰・予後に影響し合う …

食行動障害および摂食障害群

食行動障害および摂食障害群(Feeding and Eating Disorders)(DSM-5) DSM-Ⅳ-TRでは、摂食障害(Eating Disorder)として、神経性無食欲症(Anorexia Nervosa)、神経性大食症(Bulimia Nervosa)、特定不能の摂食障害の3つに分類されていました。 DSM-5で…

心身症とは?

心身症(psychosomatic disease) 定義と位置づけ 症状は器質的・機能的身体症状であるが、その発症や経過に精神的葛藤や心理社会的因子が明確に関与する。心身症は単一疾患ではなく多数の疾患があり、それらの病態をさす。DSM、ICDでは、心身症という用語は…

身体症状症および関連症群

身体症状が中心ですので、精神科領域よりも一般診療科への受診が多くなる疾患です。 DSM-IV-TRまでは「身体表現性障害」に分類された診断項目は、多くの重複があり診断の境界が不明瞭で、精神科領域外の医療者が診断基準を理解して使いこなすことは困難でし…

解離症群/解離性障害群

従来のヒステリーで、無意識的な動機(心因)によって意識障害(解離型)、運動・知覚障害(転換型)に分類されていました。 ICD10では、「解離性(転換性)障害」として、1つのカテゴリーにまとめられていますが、DSM-IVでは、「転換性障害」は「身体表現性…

心的外傷後ストレス障害(PTSD)と急性ストレス障害(ASD)

心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder: PTSD) 生命を脅かされるような大きなストレスとなる出来事によって精神的苦痛や生活機能が障害され、以下の症状が1ヶ月以上続く。 心的外傷の出来事を夢や空想のなかで追体験(フラッシュバック)…

強迫症/強迫性障害

DSM-5になっての大きな変更点ですが、強迫性障害が不安障害から独立して、「強迫症とおよび関連症群(Obsessive-Compulsive and Related Disorders)」として、強迫症、醜形恐怖症、ためこみ症、抜毛症、皮膚むしり症、物質・医薬品誘発性強迫症および関連症…

社交不安症/社交不安障害

社交不安症は、日本では森田療法で有名な森田正馬が、「赤面恐怖の療法」(人文書院1935)として記述し、その後、対人恐怖症として古くから多くの研究がなされています。当初のDSMの社交不安障害が「不安を抱き、自分が恥をかくことを恐れる」という自己主体…

広場恐怖

この病態に関しては、欧州の伝統的な考え方を踏襲してきたWHOによるICDと、米国精神医学会のDSMで異なった捉え方をされていました。 ICD-10では、広場恐怖は、恐怖症の中心的な障害で、パニック発作は恐怖症の下位項目として「パニック障害を伴わない広場恐…