therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

うつ病の後遺症と就労者の社会復帰

こころの病気による労災補償件数の推移(厚労省資料) こころの病気による労災補償件数は年々増加しており、最近でも過労自殺の問題が大きくクローズアップされました。 ただ医療の現場も含めて、一律に時間だけを規制することが良いのか疑問が残ります。個…

うつ病の経過と予後

うつ病の持続期間 うつ病は治療をしなくても、一般的には6~13ヶ月間で症状が改善することもありますが、治療をしないでそのままにしておくと重症化して、希死念慮から自殺行動につながる危険性が増えてしまいます。 適切な十分な治療を受けると多くは約3ヶ…

抗うつ薬の副作用

昔の三環系抗うつ薬に比べて、最近の薬は副作用が弱くはなっていますが、全くないわけではありません。 初期 嘔気、胃部不快、下痢、眠気、だるさ、口渇、ふらつき 不眠、不安、いらいら感、希死念慮、衝動性(特に24歳以下) 持続・維持期 体重増加、性機能…

新規抗うつ薬(SSRI・SNRI・NaSSA)の特徴

各SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)の特徴 フルボキサミン(デプロメール®・ルボックス® ) 1999年に本邦ではじめて承認されたSSRI 適応疾患:うつ病・うつ状態、強迫性障害、社会不安障害 本剤は肝薬物代謝酵素のうちCYP1A2、CYP2C9、CYP2C19の阻害…

うつ病の治療

うつ病治療の三本柱 生物学的(内因性)要因が強いときや中等症以上のときは、薬物療法をしっかりする。性格的要因が強いときや軽症のときは、精神療法・カウンセリングを重視する。環境要因が強ければ、環境調整が必要になる。繰り返したり、慢性化している…

それぞれ(年代別)のうつの特徴

子供・学生のうつ 自分の気分の状態を認識(表現)できずに、頭痛、腹痛、怠さなどの身体症状の訴えが中心になることが多い。 朝起きられずに不登校や閉じこもりに発展することがある。 親に叱責されて、泣き出したり、イライラが強くなって反抗的、易怒的に…

操作的診断基準の登場

従来診断の問題点 内因性や心因性といった病因論的な診断は、病気の理解や治療を考慮する上ではとても重要でしたが、一方で内因性でも心因となるような状況因があることから反応性との境界があいまいになり、両者の鑑別は必ずしも容易ではなく、個々の精神科…

うつ病に対する従来診断の進め方

従来のうつ病診断はどのように行われてきたのでしょうか? 外因性(身体因性)のチェック ・まずは、うつ状態を呈するような身体の病気や、服用している薬物の影響をチェックします。・身体の病気がみつかれば、その治療を行うことが必要ですが、うつ状態が…

うつ病概念の変遷-2

クレッペリンの内因性精神病概念の確立後、様々な角度からうつ病の類型化や病因論などが検討され、内因性対心因性、精神病性対神経症性といった二分法的な議論も活発に展開されました。また英米圏では、神経症性うつ病は精神病性うつ病と対置され精神病レベ…

うつ病概念の変遷

うつ病は、いつの時代から認識されていたのでしょうか? 古代~中世 古代ギリシャ時代に、ヒポクラテス(BC460~BC375)は、人間は「血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁」という4種類の体液の調和で健康が維持され、そのバランスが崩れると病気になるという体液説を…

うつ病のこころとからだの症状

うつ病のこころの症状 感情の障害 気持ちが落ち込んで憂うつになります。悲しくなったり、寂しくなったりします。不安感が強くなって、落ち着かなくなったり、イライラすることもあります。朝方のほうが不調で夕方になると少し楽になることもあります(日内…

うつ病は自然な回復力が失われた状態

うつ病ってどんな病気なの? 単なる『気分の落ち込み』 単なる気分の落ち込みは誰にでも起こりますが、その場合には、きっかけとなった状況が良い方向に改善したり、ある程度時間が経過することで、元の状態に戻ります。 うつ病の場合 休んだり気分転換して…

日本でのうつ病受診者急増の背景

図 厚労省が3年おきに報告している気分障害の総患者数 1999年までは40万人台で横ばいであったものが、その後急増して2008年には100万人を超え、9年間で約2.4倍にもなっています。 2011年は、100万人に達していませんが、これは東日本大震災により宮城県と福…

日本のうつ病の有病者

生涯有病率は 6.7% (女性が2倍),年間有病率2.9% 成人の15人に1人が生涯に1度,35人に1人が過去1年にうつ病を経験 (川上憲人: 医学のあゆみ,2006) どこの国でも女性の方がうつ病が多いのはどうしてでしょう? 女性の社会進出が進んでいますが、いま…

うつ病は今後人類を最も悩ま疾患になる!

DALY(生涯調整生命年)を用いた健全な生活を阻害する疾患・傷害の順位付け 世界保健機関(WHO)などは、DALY(Disability Adjusted Life Year: 障害調整生命年)という死が早まることで失われた生命年数(寿命ロス)と健康でない状態で生活することにより失…