各SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)の特徴
フルボキサミン(デプロメール®・ルボックス® )
- 1999年に本邦ではじめて承認されたSSRI
- 適応疾患:うつ病・うつ状態、強迫性障害、社会不安障害
- 本剤は肝薬物代謝酵素のうちCYP1A2、CYP2C9、CYP2C19の阻害作用が強く、薬物相互作用の危険性は、他のSSRIより高い。
- 強迫性障害に対する優れた効果。
- σ受容体を介した神経成長促進作用、認知機能改善作用。
- 妄想性うつ病や認知症のBPSD(周辺症状)に対する効果が報告されている。
- 併用禁忌:MAO阻害薬セレギリン塩酸塩(エフピー)、ピモジド(オーラップ)、チサニジン塩酸塩(テルネリン)、ラメルテオン(ロゼレム)
パロキセチン(パキシル®)
- 適応疾患:うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会(社交)不安障害、PTSD
- 鎮静作用が比較的強いため夕方1回の服用が望ましい。
- 抗不安作用、抗うつ作用は、比較的強力。
- 抗コリン作用があり、他のSSRIより体重増加を起こしやすい。
- 血中濃度が非線形的に上昇。半減期が短いため、他のSSRIに比べて飲み忘れ時などに離脱症候群(嘔気、めまい、不安、不眠など)を呈しやすい。減量するときも徐々(1ヶ月以上)に減量する。5mg錠まで減らしてからの中止が望ましい。
- 賦活症候群(activation syndrome)(不安、焦燥、敵意、攻撃性など)の出現リスクも高い。
- 妊婦の服用については、米国食品医薬品局(FDA)ではカテゴリーD(ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されることもありえる)
- CR錠では、血中濃度の急激な上昇や変動が緩和され、速放錠(通常薬)と比べると、初期の消化器症状や有害事象による治療中断が軽減。
- 併用禁忌:MAO阻害薬セレギリン塩酸塩(エフピー)、ピモジド(オーラップ)
- ストラテラ(ADHD治療薬)は、一緒に服用すると、血中濃度が高くなるので注意が必要。
セルトラリン(ジェイゾロフト®)
- 適応疾患:うつ病・うつ状態、パニック障害、PTSD
- 消化器症状としては下痢の出現がやや多く、性機能障害(性欲低下、勃起・射精不全など)の頻度が他のSSRIよりも高い。
- 薬物相互作用の危険性は少なく、高齢者や身体疾患に伴ううつ病に有用。
- 12種の新規抗うつ薬を直接的・間接的に比較したMANGA Studde(メタ解析)で有効性と安全性のバランスに優れた抗うつ薬として位置付けられている。 (Cipriani A, et.al. Lancet373, 746-58, 2009.)
- 併用禁忌:MAO阻害薬セレギリン塩酸塩(エフピー)、ピモジド(オーラップ)
エスシタロプラム(レクサプロ®)
- 適応疾患:うつ病・うつ状態、社会(社交)不安障害
- 最も選択的なセロトニン再取込み阻害作用を有するSSRIで、アロステリック作用によってシナプス間隙のセロトニンを強力かつ長時間増量する。
- 1日1回夕方10mgの開始用量が治療用量のため服用しやすい。
- 高齢者や身体疾患合併症の方は5mgからの投与が望ましい。
- MANGA study(メタ解析)では、有効性と受容性のバランスが最も良好な抗うつ薬。(Cipriani A, et.al. Lancet373, 746-58, 2009.)
- 薬物相互作用が少なく、脱落率も低いが、QT延長への注意が必要。
- 併用禁忌:MAO阻害薬セレギリン塩酸塩(エフピー)、ピモジド(オーラップ)
各SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の特徴
ミルナシプラン(トレドミン®)
- 2000年に本邦ではじめて承認されたSNRI
- 適応疾患:うつ病。うつ状態
- 薬物相互作用の危険性は少なく、高齢者や身体疾患に伴ううつ病に有用。
- 抗コリン作用や鎮静作用が少なく、離脱症候群も、ほとんど見られない。
- 主にグルクロン酸抱合で代謝されるため、肝臓への負担が少なく、加齢の影響を受けにくい
- ノルアドレナリンに対する作用から抑制症状や痛みにより有効だが、一方で排尿障害、動悸、血圧上昇、頭痛、発汗などの副作用に注意。前立腺肥大は禁忌。
- 併用禁忌:MAO阻害薬セレギリン塩酸塩(エフピー)
デュロキセチン(サインバルタ®)
- 適応疾患:うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛
- ミルナシプランよりもセロトニンとノルアドレナリンの再取込み阻害作用が強力。
- 1日1回朝食後服用。20-60mg。傾眠がある場合夕食後投与。
- 疼痛を有するうつ病者では、第一選択薬になり得る。
- 併用禁忌:MAO阻害薬セレギリン塩酸塩(エフピー)
ベンラファキシン(イフェクサーSR®)
- 適応疾患:うつ病・うつ状態
- 低用量(150mg/日未満)ではSSRI、高用量(150mg/日以上)でSNRI
- パロキセチンと同様に半減期が短いため離脱症候群の頻度が比較的高い。
- 高用量で不眠、頻脈、血圧上昇など
- 海外のガイドラインでは、英国精神薬理学会(BAP)が重症度の高いうつ病治療の第一選択薬(150mg以上)、モーズレイでは、治療抵抗性うつ病の第一選択(NaSSAとの併用→カリフォルニアロケット)に推奨されており、重症度の高いうつ病への効果が期待されている。
- 併用禁忌:MAO阻害薬セレギリン塩酸塩(エフピー)
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)の特徴
ミルタザピン(リフレックス®・レメロン®)
- 適応疾患:うつ病・うつ状態
- 薬物相互作用や消化器症状が少なく比較的速効性。
- 抗不安作用が強いが、抗ヒスタミン作用による眠気や過鎮静に注意。
- 不眠や食欲不振の強いときに有用。
- 5-HT3受容体遮断による嘔気の抑制やノルアドレナリン増強による疼痛抑制にも効果を示す。
- SSRIやSNRIと併用することで寛解率が高まるとの報告がある。
- 賦活症候群(activation syndrome)の出現リスクが少ない。
- 併用禁忌:MAO阻害薬セレギリン塩酸塩(エフピー)