therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

2019-01-01から1年間の記事一覧

不安症に対するSSRI・SNRIの適応

不安症に対するSSRI・SNRIの適応と特徴 1. 日本における疾患別の保険適応の現状 不安症の治療において、海外のガイドラインと日本の健康保険適応には長らくズレが存在していたが、近年の承認追加により日本の治療環境もグローバルスタンダードに近づきつつあ…

臨床催眠の適応疾患:疼痛管理

臨床催眠の適応疾患:疼痛管理 1. 疼痛管理における催眠の歴史と実績 催眠は外科手術の麻酔手段として古くから応用されてきた。 エスデイルの実績: 1846年、英国の外科医ジェームズ・エスデイルは、インドにおいて催眠のみを用いた麻酔で多くの手術を成功さ…

臨床催眠の適応疾患:身体疾患

臨床催眠の適応疾患:身体疾患 1. がん治療における催眠の役割と延命・QOLへの影響 がんに対する催眠療法は1970年代から本格化し、主に疼痛、不安、うつ状態といった二次的な症状の緩和を目的に実施されてきた。 延命効果とQOLに関する研究: スタンフォード…

臨床催眠の適応疾患:心身症

臨床催眠の適応疾患:心身症 1. 心身症に対する催眠療法の基本視座 心身症は、ストレスや情緒的葛藤が身体の病態に大きな影響を与える疾患群である。催眠療法は、それ自体が持つ強力な「不安の軽減」および「抗ストレス効果」を通じて、心身両面からの改善を…

臨床催眠の適応疾患:性機能不全

臨床催眠の適応疾患:性機能不全 1. 性機能不全における催眠療法の歴史 性機能不全に催眠を適用するにあたっては、まず性に関する広範な専門知識を習得していることが大前提となる。 この分野における催眠の歴史は古く、1941年にエリクソンとキュービーが性…

臨床催眠の適応疾患:うつ病性障害

臨床催眠の適応疾患:うつ病性障害 1. 過去における「うつ病への催眠」の禁忌理由 従来、うつ病患者に催眠を用いることは危険であるとされ、主に以下の4つのリスクが懸念されていた。 予期せぬ反応: クライエントの情緒が不安定なため、トランス状態で制御…

臨床催眠の適応疾患:不安障害

臨床催眠の適応疾患:不安障害 1. 不安障害(パニック障害、恐怖症、強迫性障害、GAD) 不安障害に対する治療の第一選択は認知行動療法(CBT)であり、「恐怖場面に直面する(暴露法)」ことが原則となる。催眠は、このプロセスを強力にサポートする手段とし…

催眠認知行動療法

催眠認知行動療法 1. 認知行動療法に催眠を付加する理論的根拠 認知行動療法ではもともと「イメージ」が積極的に活用されるが、これを催眠下で行うことで治療効果がさらに増大する。その根拠として、催眠状態がもたらす以下の5つの特性が挙げられる。 催眠感…

自我状態療法

自我状態療法 1. 自我状態療法とは(「自己内家族」の葛藤解決) 自我状態療法は、一人の人間の人格の中には、まるで家族のように複数の異なる「自我状態(パート)」が存在し、それらが「自己内家族」を形成していると考えるアプローチである。 心の中に生…

催眠精神分析療法

催眠精神分析療法 1. 催眠精神分析療法の位置づけとメリット(期間の短縮) 催眠精神分析療法は、比較的短期で終結する力動的心理療法(無意識の葛藤を扱う治療)では十分な効果が得られなかった場合に適用される技法である。 治療の初期、あるいは終盤の段…

催眠投影技法

催眠投影技法 1. 「投影」のメカニズムと防衛反応 「投影」とは、自分自身の内面にある葛藤や、どうしても受け入れがたいネガティブな感情を、自分ではなく他人のものとして反射(反映)させる心理メカニズムのことである。 フロイトはこれを、人間が自らの…

方略的指示療法

方略的指示療法(Strategic Psychotherapy) 1. 方略的指示療法の目指す理想像 方略的指示療法は、クライエントが抱える問題点や症状をそのまま容認する「非指示的」なアプローチと、そこに肯定的な変化を積極的にもたらす「指示的」なアプローチの双方を兼…

催眠情動調整法

催眠情動調整法 1. 情動調整の概念と目的 「情動調整」とは、単に喜怒哀楽の感情をコントロールするだけでなく、思考、感情、行動、そして生理的な反応すべてを含めて安定化させることである。 個人の中に眠っている治癒能力を積極的に引き出し、心身の安定…

認知症の予防と回復(リコード法)

リコード(ReCODE: Reversal of Cognitive Decline)法 「アルツハイマー病 真実と終焉」(デール・ブレデセン著 、白澤卓二監修、山口茜訳、ソシム(株)) アルツハイマー病の新たな分類 炎症性(脳の炎症が原因で、食事も深く関与) 萎縮性(脳機能の維持…

後催眠暗示

後催眠暗示 1. 後催眠暗示の定義とメカニズム 後催眠暗示とは、催眠中に与えられた暗示が、催眠から覚めた後(覚醒後)の行動、態度、感情として現実化する反応のことである。 真の後催眠暗示: 意識活動の流れが一時的に中断し、被験者は「なぜそうするのか…

時間再構成法-②年齢進行

時間再構成法-②年齢進行 1. 年齢進行のメカニズムと「圧倒的な現実味」 年齢進行(Age Progression)とは、未来において「目標を達成し、見事に成功している自分」の姿をイメージさせる技法である。 エリクソンによれば、この手法の最大のポイントは「深い…

時間再構成法-①年齢退行

時間再構成法-①年齢退行 1. 年齢退行の歴史と2つの意識状態 年齢退行の報告は1800年代から存在したが、本格的に治療に用いられるようになったのは、二度の世界大戦における戦争神経症(いわゆるPTSDなどの心的外傷)の治療からである。 年齢退行における被…

催眠現象利用法

催眠現象利用法 1. 腕挙上(うできょじょう) 催眠誘導において最も頻繁に引き起こされる、手や腕が持ち上がる現象である。理想的には、被験者が努力することなく自動的に腕が上がり、そのまま空中で固定される(カタレプシー)状態に移行する。 この不思議…

症状除去法と自我強化法

1. 症状除去法(Symptom Removal) 19世紀において唯一の心理療法として頻繁に用いられてきた古典的な技法である。 効果的な対象: 目標とする症状が「身体的な原因(身体因)」によるものであり、そこに「情緒的な反応(不安や恐怖など)」が伴っている場合…

催眠誘導の原則

催眠誘導の原則 1. 催眠誘導の多様性と「自然発生トランス」 一般的に催眠は「目を閉じてリラックスするもの」と思われがちだが、「催眠=弛緩(リラックス)」という図式は必ずしも正しくない。覚醒したままの状態や、被験者が極度の不安を抱えている状態で…

催眠感受性尺度の意義

催眠感受性尺度の意義 1. 催眠感受性尺度を肯定する立場(客観的指標としての意義) 催眠感受性には他の性格特性と同じように個人差があるため、一般的な心理テストと同様に、これを客観的に測定する手段を確立することには価値がある。 尺度を肯定する立場…

催眠感受性

催眠感受性 1. 催眠感受性の定義と分布・年齢変化 臨床催眠において重要な「催眠感受性(hypnotizability)」は、催眠被暗示性や催眠感応性とも呼ばれ、「催眠暗示に対する反応能力」と定義される。 ヒルガードの研究によれば、その分布は以下のようになって…

サービンの役割理論

サービンの役割理論 サービン(Theodore Roy Sarbin, 1911–2005) 1. 役割理論による「変性意識説」の否定 サービンは、催眠を「変性意識(特別な意識状態)」とする説の非妥当性を、社会心理学の立場から最も早く表明した人物である。 彼は、社会学者G・H…

アーヴィン・カーシュの反応期待説

アーヴィン・カーシュの反応期待説 アーヴィン・カーシュ(Irving Kirsch, 1943 -) 1. プラセボ効果と「反応期待」の強力な作用 カーシュは、人間の行動や反応は「これから一体何が起こるのだろうか」という期待感(反応期待)によって決定されると考えた。…

スパノスの方策的役割履行と課題志向空想

スパノスの方策的役割履行と課題志向空想 Nicholas Peter Spanos (1942-1994) 1. 「方策的役割履行」の提唱(単なる服従や「ふり」からの脱却) バーバーの課題動機説に対しては、状態論派から「それならば、被験者が催眠にかかった『ふり(演技)』をして…

催眠の社会認知理論:バーバーの課題動機説

1. 「非状態論」と社会認知理論の台頭 ヒルガードらが主張した「催眠とは意識が解離した特別な状態(変性意識)である」とする状態論に対し、「非状態論」は催眠を特別な意識状態とはみなさない。 非状態論では、催眠反応を「被験者が置かれた状況要因」や「…

心理退行理論

心理退行理論 フロイトは催眠を放棄したものの彼の弟子の中には催眠精神分析(hypnoanalysis)の発展に尽くした人達もいる。それは催眠理論の中では心理退行理論(psychological regression theory)と呼ばれている。 Merton Gill(1914-1994) Margaret Bre…

ヒルガードの新解離理論

ヒルガードの新解離理論 アーネスト・ヒルガード(Ernest Hilgard, 1904 – 2001) 1. 新解離理論の提唱 催眠中に、暗示によって腕が勝手に上がったり目が自然に閉じたりする「非意図的反応」について、ヒルガードは「心的解離(心の一部が切り離されること)…

ハラスメントの種類

2017 年1月1日、男女雇用機会均等法 と育児・介護休業法の法改正により、新たにマタハラの防止措置が事業主の職務となり、セクハラやパワハ ラと並んでマタハラについても適切な対応を職場で図ることが求められています。 ハラスメントの種類 アカデミック・…

自己愛性神経症

自己愛性神経症 1. リビドー理論の精神病への拡張(自己愛性神経症) フロイトは、早発性痴呆(現在の統合失調症)やパラノイア、メランコリーなどの重い精神病に対しても精神分析の適用を試み、これらを「自己愛性神経症」と名付けた。 自我へのリビドー集…