therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

2019-01-01から1年間の記事一覧

不安の問題

不安の問題 次の章「不安」は、フロイトの神経症論、ことに恐怖症にとって重要な問題である。 「不安の問題が、あらゆる最も重要な問題の集中する交差点であることは確かです。そしてこの問題は、それを解決すれば、私どもの心的生活全体の上に豊かな光が降…

自我欲動の役割

自我欲動の役割 この辺から話は性欲動に対する自我欲動の重要さの説明に入る。 「・・・・ところでリビドーの欲求に対して抗議する勢力、すなわち病因となる葛藤における相手方の一方は何でしょうか。ごく一般的に言えば、それは性的でない欲動の諸力です。私ど…

神経症構造論の中核

神経症構造論の中核 フロイトの神経症構造論は、これから後の数章の中にその核心があるように思われる。ことに最初の「発達と退行の観点、病因論」がそうである。 「リビドーの発達にあたっては、一般病理学の学説と全く同じように、二つの危険を伴うことを…

エリクソン催眠の方略的アプローチ

ミルトン・H・エリクソンの方略的アプローチ ミルトン・エリクソン(Milton H. Erickson, 1901- 1980) エリクソンは1930年頃から斬新なパラダイムと技法を催眠に取り入れ、現代催眠を心理療法のメインストリームに合流させた。 彼は、催眠者にも被催眠者に…

固着、無意識、抵抗、抑圧

固着、無意識、抵抗、抑圧 私は、特に注意を要すると私が考えるもの、フロイトの真意がはっきりわかると思われるもの、フロイドの思想のうち、従来見落とされがちであったと思われるものなどを以下に抜粋することとした。 「強迫神経症のもつこれらの症状、…

フロイトの精神医学批判

フロイトの精神医学批判 「・・・・ある人々は私の自己訂正をまったく知らず、すでに私にとって以前とは違う意味をもつようになっている主張を盾にとって、今日でも私を批判しております。・・・・自分の見解を三度三度変更した者は、おおよそ信用することができない…

フロイトの神経症の分類と命名

フロイトの神経症の分類と命名 フロイトは神経症の第一群として感情転移神経症を立て、これは、不安ヒステリーと転換ヒステリーと強迫神経症の3型を含む概念だとする。そして彼は「ここで私が抑圧や症状形成や症状解釈に関して言っていることは、すべてこの…

精神分析に対する批判

精神分析に対する批判 フロイトの不屈な闘魂と確信と、それに従来の通念から全く離れた大胆な理論とは、すべての専門家を、彼に賛成か反対か、味方か敵かに、はっきりと区別してしまった。また永らく彼と行を共にしたにもかかわらず、意見の食いちがいが元で…

フロイトと内因性精神病

フロイトと内因性精神病 フロイトは、精神医学の中心課題でありながら、今なお本態不明のままである内因性精神病の症状にまで、そのリビドー学説による解明を試みた。 彼は、メランコリー患者の苦悩または自殺念慮とは、失われた、または背かれた性対象に対…

催眠感受性尺度の登場

催眠感受性尺度の登場 André Muller Weitzenhoffer (1921-2004) Ernest Hilgard(1904-2001) 1959年ワイツェンホッファーとヒルガードによるスタンフォード催眠感受性尺度が作成され、その他に同様の尺度がいくつか作成され、これは必須の技法として推奨さ…

現代催眠の夜明け

実証的催眠研究の始まり クラーク・ハル(Clark Leonard Hull, 1884 – 1952) 実験心理学の権威であったハルが、1933年催眠現象の統制研究をまとめた「催眠と暗示」という実験科学的研究の著書を出版した。当初は批判もあったが、米国心理学会会長を務めた彼…

フロイトの神経症論

フロイトの神経症論 フロイト(左)とジャネ(右) ジグムント・フロイトは、ジャネと共に神経症学を飛躍的に発展させたのみならず、深層心理学全般に未曽有の新生面を開拓して、その師たるシャルコーをはるかにしのぐ盛名を得た人である。 フロイトは最初、…

ジャネとフロイトの相違

ジャネとフロイトの相違 ジャネの理論に対しては精神分析の側からの反論が起こった。精神分析派はジャネのいわゆる心理的緊張性の思想を認めることができず、またジャネが心理的緊張性の減弱と呼んだ障害を、精神分析の側は自我の減弱によるものと主張したか…

ジャネの心理的緊張学説と段階的構成論

ジャネの心理的緊張と精神衰弱症 ジャネの業績の核心をなすものは心理的緊張(la tension psychologique)の学説である。 「ジャネの理論を理解する上に常に必要な概念は、精神の総合の能力という考えであろう・・・・それはすべての心的機能を統一し、より高次…

ジャネのヒステリー論

ジャネのヒステリー論 彼もシャルコーの門下生であって、その師の大きな影響の下に暗示や催眠術の研究を行なった。彼はヒステリーの心理的緊張の、心理学的、病理学的理論を打ち立て、それによって多くの精神状態を説明しようと試みたし、また精神衰弱症の概…

ババンスキーの説得可治症

ババンスキーの説得可治症 ジョゼフ・ジュール・フランソワ・フェリックス・ババンスキー(Joseph Jules François Félix Babinski, 1857 – 1932) ババンスキーは長くシャルコーの下にあったから、その業績には神経病学的のものが多く、この方面で彼は不朽の…

ジャネとフロイトの催眠

ジャネとフロイトの催眠 ピエール・ジャネ ピエール・ジャネの人と生涯 - therapilasisのブログ シャルコーやベルネームにも師事し、非常に活動的な催眠療法家になり、催眠を解離現象ととらえ、ヒステリーとの類似性を指摘した。催眠状態のみで食事のできる…

サルペトリエール学派とナンシー学派の催眠

サルペトリエール学派とナンシー学派の催眠 サルペトリエール学派の催眠シャルコーが率いるサルペトリエール学派の催眠法は、「大量刺激法」と呼ばれる過度の刺激を患者に与え、そのショックで催眠状態に誘導しようとするものである。例えば、中国のドラやア…

シャルコーのヒステリー研究と催眠

シャルコーのヒステリー研究と催眠 ジャン-マルタン・シャルコー (Jean-Martin Charcot、1825 – 1893) シャルコーは、多くの脊髄や脳の疾患の発見や記載によって不朽の業績を遺した近世神経学の始祖であるが、一方で、彼はそのヒステリー研究において、当…

ヒプノティズムの誕生③

ヒプノティズムの誕生③ ジェイムズ・ブレイド(James Braid、1795 - 1860) ブレイドはスコットランド人で、1815年エディンバラ大学で外科医の資格を取り、イギリスロイヤルカレッジのメンバーにもなっている。 1841年、ブレイドはマンチェスターで、フラン…

ヒプノティズムの誕生②

ヒプノティズムの誕生② ジェイムス・エスディール(James Esdaile、1808 - 1859) ジェイムス・エスディールは、インドのHooglyに駐留したスコットランド人医師で、1840年代、催眠麻酔によって2,000例に及ぶ手術を行いました。そのうち300例は四肢切断、フィ…

ヒプノティズムの誕生①

ヒプノティズムの誕生① ジョン・エリオットソン(John Elliotson、1791 – 1868) 1837年にロンドン大学の医学部教授ジョン・エリオットソンがフランス人のメスメリスト(ジュール・デュポット男爵)の実演をロンドンで見て、その結果に驚嘆する。 エリオット…

古典的催眠

古典的催眠 1775年のメスメルの動物磁気の提唱から1894年のフロイトの催眠の放棄までの期間 メスメルと動物磁気(animal magnetism):メスメリズム (mesmerism) Franz Anton Mesmer(1734-1815) 18世紀中期は重力、化学反応、電気、磁気など自然科学上の発…

催眠の本質

催眠の本質についての論争 状態論派-トランスとしての変性意識状態 非状態論派-通常の心理反応の一形態↓ 二者択一的な考えではなく、大脳生理に根拠をおく変性意識と、さまざまな心理・社会・対人要素の関わり、さらに暗示の役割がいかなる状況で、どのよ…

催眠の定義

催眠の定義 催眠は他律的もしくは自律的な暗示により、独特でしかも多様な精神的身体的変化の惹起された状態である。まずは単調刺激への注意集中や暗示により現実意識の低下、没頭などの精神活動の内向化が生起する。暗示はさらに、運動、知覚、情動、思考へ…