2018-01-01から1年間の記事一覧
向精神薬の適正使用-2018年診療報酬改訂- 3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬、3種類以上の抗精神病薬又は4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬を行った場合(ロゼレム、ベルソムラを含む) 処方料 42点⇒18点 処方箋料 68…
不眠症治療の問題点 睡眠薬の1日当たりの処方量や多剤併用率が一貫して増加。 高齢化や震災、経済問題など多様なストレスを原因とする難治性の不眠症患者が増加。 医療者の知識不足による不適切処方、漫然とした長期処方による依存や乱用が存在。 睡眠薬に対…
高齢者のてんかん てんかんは65歳以上の高齢者で発病率が最も高い 意識障害を伴う焦点発作が多い 自動症は少なく、発作の持続が短い 意識が減損し、動作が停止する 健忘だけが目立つ 夢を見ているような発作(既視感、未視感) 短い無動凝視だけで発作後症状…
脳卒中後うつ病の現状 わが国において脳卒中は、年間約30万人が発症し、有病者数は300万人を超えていることが推測され、介護が必要な身体障害の原因の第1位であり、国民病とも言われています。 脳卒中後うつ病は、脳卒中患者さんの約3割に発症し、認知機能…
障害者雇用の現状 複数の中央省庁で障害者雇用の水増し問題が発覚しました。日本の障害者雇用の義務化は、1976年に身体障害者を対象に始まりました。民間企業の法定雇用率は1.5%でした。1997年に知的障害者、2018年に精神障害者にと対象が広がり、現在の法…
脳卒中後うつ病と社会的機能 脳卒中のような急性の身体疾患においては、家族や友人を含めた周囲の人々からの社会的支援がない場合、支援がある場合に比べてうつ病の発症率は高くなる可能性があります。 Robinsonらは、社会的機能検査(social functioning ex…
脳卒中後うつ病と失語症 多くの研究者が脳卒中後うつ病研究において、うつ状態の評価が困難との理由から失語症患者を除外して検討しているにもかかわらず、失語症が脳卒中後うつ病の原因だという仮説が議論されています。 Gainottiは、生活環境のなかで、言…
脳卒中後うつ病と認知機能障害の関連 ~Robinsonグループの検討を中心に~ 大うつ病と認知機能障害(MMSE得点による)との関連 脳卒中の急性期患者276例の検討で、大うつ病は小うつ病や非うつ病に比較して有意に認知機能が障害されていたと報告されています…
脳卒中後うつ病と身体機能障害 脳卒中後うつ病と身体機能障害との関連について、うつ病の重症度はADL(日常生活動作)の障害と有意な相関があることが一貫して示されています。 脳卒中後うつ病とADLの回復の関係については、一致した見解は示されていません…
脳卒中後うつ病と優位半球との関連 左側に運動優位性を持つ患者(左利きで、ものを見るときに左眼を使い、書くときや食べるときは左手、蹴るときは左足)では、右半球病変よりも左半球病変で、うつ病の頻度が有意に高いことが示されています。また、左半球前…
脳卒中後の遅発性うつ病 脳卒中後の遅発性うつ病 Robinsonらの142例の脳卒中患者による検討において 脳卒中後の急性発症(急性期の入院中の発症)の大うつ病に比べて、遅発発症(入院後3ヶ月から2年までの間に発症)の大うつ病は、発症年齢が高い傾向があり…
脳卒中後うつ病の自然経過 入院中にDSM-IV診断で大うつ病(27例)、小うつ病(36例)、非うつ病(79例)の3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月の追跡による診断結果 脳卒中後大うつ病の持続期間は、大多数の患者さんにおいて12カ月以上持続することはありません。…
脳卒中後うつ病の症候学的議論 脳卒中後大うつ病(n=43)と年齢を一致させた機能性うつ病(n=43)の臨床症状の比較 LipseyらのRobinsonグループは、脳卒中後大うつ病は、機能性大うつ病と比較して、「緩慢さ」が有意に高く、「興味と集中力の低下」は有意に…
脳卒中後うつ病の有病率 脳卒中後の大うつ病と小うつ病の新規症例において、大うつ病は平均約1年続き(少数例は3年以上続く)、小うつ病は数ヶ月から2年以上続き、あるいは大うつ病に発展して悪化することがあります。 Robinsonらは脳卒中後うつ病が発症する…
脳卒中後うつ病の診断 「ロバート・G・ロビンソン著:脳卒中における臨床精神医学-脳血管障害後の認知・行動・情動の障害-第2版(木村真人監訳)」からのエッセンスをまとめていきたいと思います。 DSM診断における大うつ病と小うつ病の診断基準 脳卒中後…
成人期ADHDの理解と対応 ADHDは小児期から成人期まで同一の神経生物学的基盤を持つと考えられます。ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系の調節を受ける前頭前野、報酬系、小脳等の脳部位の関与が指摘されています。 周囲の理解と援助 家族や職場の人達、…
成人期ADHDの症状と診断 成人期ADHDの診断 児童期から成人期まで症状が持続し、社会適応を妨げる要因となりうる疾患です。児童期から現在に至るまでの生育歴を詳細に聴取して、就学や就労を含めたライフステージに応じて発生した心理社会的問題を吟味して、A…
向精神薬による口渇 口渇は、三環系抗うつ薬などの抗コリン薬は、とくに出現しやすい副作用ですが、その他の多くの向精神薬でも多かれ少なかれ出現します。 対処方法としては、シュガーレスのガムやキャンディーで緩和されることもあります。漢方薬では、白…
双極性障害に対するカルシウム拮抗薬 カルシウム拮抗薬は、高血圧や狭心症に対する治療薬ですが、精神科領域では、適応外ですが、躁病や気分周期が24時間以内のウルトラ・ラピッド・サイクラー型の双極性障害に対して用いられることがあります。 ベラパミル…
α2アドレナリン受容体作動薬であるクロニジン(カタプレスⓇ)は、ノルアドレナリンの分泌を抑制して血圧を下げる降圧薬として使用されていますが、精神科領域でも使用されます。グアンファシン(インチュニブⓇ)は、わが国においても注意欠陥多動性障害(ADH…
βブロッカーの精神科領域での使用 βブロッカーは本態性高血圧や狭心症、不整脈、片頭痛などの治療薬として良く用いられていますが、適応外ながら前述したアカシジアの治療や以下のような精神科領域でも多用される薬剤です。 パニック症、社交不安症に対する…
遅発性ジスキネジア 抗精神病薬の服用をはじめて3か月以上経過(多くは6ヶ月以上)してから出現する遅発性の副作用です。口周囲の運動異常の頻度が高く、口をもぐもぐさせたり、よじったり、舌を突き出したりするような不随意で不規則な運動が出現します。顔…
向精神薬によるアカシジア(静座不能症) アカシジアは、じっとしていられないような落ち着きのなさが出現して、そわそわと動き回ったり、足踏みや姿勢の頻繁な変更などが起こり、精神的にも強い不安焦燥感や内的不隠を有していることが特徴です。機序として…
向精神薬による体重増加 向精神薬の副作用で、最も患者さんが苦痛に感じる副作用の一つに体重増加があります。 もちろん食欲がなくて、痩せが目立つ場合には、食欲が改善することは望ましいわけですが、食欲不振がそれほどないのに、食欲が出すぎて過食にな…
SSRIによる賦活症候群(activation syndrome) SSRIで治療を始めた患者さんの多くは、使用開始後の最初の2~3週間に精神運動性の活動亢進を経験します。 SSRIの賦活作用は、特に24歳以下の若年者で多く出現し、自殺のリスクのある患者さんにおいて、自殺衝動…
SSRIによる性機能障害 多くの向精神薬の使用に伴い、さまざまな程度の性機能障害が起こり得ます。 抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)服用中の患者さんのなんと50~80%が、性欲減少、射精・勃起障害、女性におけるオルガズムの抑制などの…
パーソナリティ障害群(Personality Disorders) 第Ⅱ部 A群パーソナリティ障害(Cluster A Personality Disorders):奇妙で風変わり B群パーソナリティ障害(Cluster B Personality Disorders):演技的、情緒的で、移り気 C群パーソナリティ障害(Cluster …
精神疾患の競い合う3つのモデル 精神力動的モデル 行動学的モデル 生物学的モデル 精神疾患の競い合う3つのモデル 精神力動的モデル 精神力動的モデルは、フロイトの著作から生まれ、他の精神分析研究者がフロイトのもともとの説に、追加・修正をしてきた。 …
精神分裂病の精神力動論 力動精神医学とは サリバンの対人関係理論 3種類の体験様式 サリバンの精神分裂病発生論 サリバンとミンコフスキーとの対比 「現実との生ける接触の喪失」 「自閉性」概念の確立 (内村祐之:精神医学の基本問題(1972)参照) (文…
カール・クライスト(Karl Kleist、1879 -1960) クライストの思想、特にその“Syndrom”学説 クライストの神経因性疾患に対する解釈 精神病理学者ヤスパースに対するクライストの反論 分裂病の病理解剖の問題 カール・クライスト(Karl Kleist、1879 -1960) …