不眠症治療の問題点
- 睡眠薬の1日当たりの処方量や多剤併用率が一貫して増加。
- 高齢化や震災、経済問題など多様なストレスを原因とする難治性の不眠症患者が増加。
- 医療者の知識不足による不適切処方、漫然とした長期処方による依存や乱用が存在。
- 睡眠薬に対して不安を高じた患者が自己判断による断薬を行い、退薬症状で苦しむ事例が散見。
ベンゾジアゼピン(BZ)の多剤・大量投与の問題
- 副作用発現率の上昇
- 眠気、ふらつき、転倒、精神運動機能の低下、前向性健忘など
- 依存・耐性形成の危険性が高まる
- 特に超短時間型・短時間型の睡眠薬
- BZ受容体作働薬全体(BZ・非BZ)の問題としてとらえる必要
- BZ受容体作動性睡眠薬は原則として単剤投与
ベンゾジアゼピン使用に伴う認知症リスクに関するメタ解析
- 15件の研究(14論文)から159,090例を抽出
- ベンゾジアゼピンを常用することで、認知症リスクは有意に増加
(オッズ比[OR]:1.39、95%CI:1.21~1.59)。 - protopathic biasが制御された5年以上の最長ログタイムによる研究でも依然として有意な増加(OR:1.30、95%CI:1.14~1.48)。
- 長時間作用型ベンゾジアゼピン薬(OR:1.21、95%CI:0.99~1.49)は、短時間作用型(OR:1.13、95%CI:1.02~1.26)と比較し、リスク値がわずかに高かったが、統計学的な有意差はなかった(p=0.059)。
- ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連性は、protopathic biasによる人為的なものではないことが示唆された。
- 不適切なベンゾジアゼピン使用を減少させることは、認知症リスクを低減させる可能性がある。
※protopathic biasとは、認知症の発症前に不安や抑うつが出現するので、ベンゾジアゼピンの処方が多くなり、認知症になる人がベンゾジアゼピンを多く服用していると誤って検出されるというバイアスのことです。
(Penninkilampi R, Eslick GD: CNS Drugs. 2018 Jun 20./s40263-018-0535-3.)