2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧
脳卒中後の遅発性うつ病 脳卒中後の遅発性うつ病 Robinsonらの142例の脳卒中患者による検討において 脳卒中後の急性発症(急性期の入院中の発症)の大うつ病に比べて、遅発発症(入院後3ヶ月から2年までの間に発症)の大うつ病は、発症年齢が高い傾向があり…
脳卒中後うつ病の自然経過 入院中にDSM-IV診断で大うつ病(27例)、小うつ病(36例)、非うつ病(79例)の3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月の追跡による診断結果 脳卒中後大うつ病の持続期間は、大多数の患者さんにおいて12カ月以上持続することはありません。…
脳卒中後うつ病の症候学的議論 脳卒中後大うつ病(n=43)と年齢を一致させた機能性うつ病(n=43)の臨床症状の比較 LipseyらのRobinsonグループは、脳卒中後大うつ病は、機能性大うつ病と比較して、「緩慢さ」が有意に高く、「興味と集中力の低下」は有意に…
脳卒中後うつ病の有病率 脳卒中後の大うつ病と小うつ病の新規症例において、大うつ病は平均約1年続き(少数例は3年以上続く)、小うつ病は数ヶ月から2年以上続き、あるいは大うつ病に発展して悪化することがあります。 Robinsonらは脳卒中後うつ病が発症する…
脳卒中後うつ病の診断 「ロバート・G・ロビンソン著:脳卒中における臨床精神医学-脳血管障害後の認知・行動・情動の障害-第2版(木村真人監訳)」からのエッセンスをまとめていきたいと思います。 DSM診断における大うつ病と小うつ病の診断基準 脳卒中後…
成人期ADHDの理解と対応 ADHDは小児期から成人期まで同一の神経生物学的基盤を持つと考えられます。ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系の調節を受ける前頭前野、報酬系、小脳等の脳部位の関与が指摘されています。 周囲の理解と援助 家族や職場の人達、…
成人期ADHDの症状と診断 成人期ADHDの診断 児童期から成人期まで症状が持続し、社会適応を妨げる要因となりうる疾患です。児童期から現在に至るまでの生育歴を詳細に聴取して、就学や就労を含めたライフステージに応じて発生した心理社会的問題を吟味して、A…
向精神薬による口渇 口渇は、三環系抗うつ薬などの抗コリン薬は、とくに出現しやすい副作用ですが、その他の多くの向精神薬でも多かれ少なかれ出現します。 対処方法としては、シュガーレスのガムやキャンディーで緩和されることもあります。漢方薬では、白…
双極性障害に対するカルシウム拮抗薬 カルシウム拮抗薬は、高血圧や狭心症に対する治療薬ですが、精神科領域では、適応外ですが、躁病や気分周期が24時間以内のウルトラ・ラピッド・サイクラー型の双極性障害に対して用いられることがあります。 ベラパミル…
α2アドレナリン受容体作動薬であるクロニジン(カタプレスⓇ)は、ノルアドレナリンの分泌を抑制して血圧を下げる降圧薬として使用されていますが、精神科領域でも使用されます。グアンファシン(インチュニブⓇ)は、わが国においても注意欠陥多動性障害(ADH…
βブロッカーの精神科領域での使用 βブロッカーは本態性高血圧や狭心症、不整脈、片頭痛などの治療薬として良く用いられていますが、適応外ながら前述したアカシジアの治療や以下のような精神科領域でも多用される薬剤です。 パニック症、社交不安症に対する…
遅発性ジスキネジア 抗精神病薬の服用をはじめて3か月以上経過(多くは6ヶ月以上)してから出現する遅発性の副作用です。口周囲の運動異常の頻度が高く、口をもぐもぐさせたり、よじったり、舌を突き出したりするような不随意で不規則な運動が出現します。顔…
向精神薬によるアカシジア(静座不能症) アカシジアは、じっとしていられないような落ち着きのなさが出現して、そわそわと動き回ったり、足踏みや姿勢の頻繁な変更などが起こり、精神的にも強い不安焦燥感や内的不隠を有していることが特徴です。機序として…
向精神薬による体重増加 向精神薬の副作用で、最も患者さんが苦痛に感じる副作用の一つに体重増加があります。 もちろん食欲がなくて、痩せが目立つ場合には、食欲が改善することは望ましいわけですが、食欲不振がそれほどないのに、食欲が出すぎて過食にな…
SSRIによる賦活症候群(activation syndrome) SSRIで治療を始めた患者さんの多くは、使用開始後の最初の2~3週間に精神運動性の活動亢進を経験します。 SSRIの賦活作用は、特に24歳以下の若年者で多く出現し、自殺のリスクのある患者さんにおいて、自殺衝動…
SSRIによる性機能障害 多くの向精神薬の使用に伴い、さまざまな程度の性機能障害が起こり得ます。 抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)服用中の患者さんのなんと50~80%が、性欲減少、射精・勃起障害、女性におけるオルガズムの抑制などの…
パーソナリティ障害群(Personality Disorders) 第Ⅱ部 A群パーソナリティ障害(Cluster A Personality Disorders):奇妙で風変わり B群パーソナリティ障害(Cluster B Personality Disorders):演技的、情緒的で、移り気 C群パーソナリティ障害(Cluster …
精神疾患の競い合う3つのモデル 精神力動的モデル 行動学的モデル 生物学的モデル 精神疾患の競い合う3つのモデル 精神力動的モデル 精神力動的モデルは、フロイトの著作から生まれ、他の精神分析研究者がフロイトのもともとの説に、追加・修正をしてきた。 …
精神分裂病の精神力動論 力動精神医学とは サリバンの対人関係理論 3種類の体験様式 サリバンの精神分裂病発生論 サリバンとミンコフスキーとの対比 「現実との生ける接触の喪失」 「自閉性」概念の確立 (内村祐之:精神医学の基本問題(1972)参照) (文…
カール・クライスト(Karl Kleist、1879 -1960) クライストの思想、特にその“Syndrom”学説 クライストの神経因性疾患に対する解釈 精神病理学者ヤスパースに対するクライストの反論 分裂病の病理解剖の問題 カール・クライスト(Karl Kleist、1879 -1960) …
ブロイラーとクライスト ブロイラーとマイヤー ブロイラーの精神分裂病研究とクレペリン ブロイラーの分類 ブロイラーと精神分析 マイヤーの横顔 マイヤーの「早発性痴呆の力動的解釈」 マイヤーと精神分析 マイヤーの反応型学説 マイヤーの精神生物学 (内…
『狂気の歴史』(1961) われわれに対してフーコーがこの書物の中で、つきつけていることの要点は次のようなものである。 現代の精神医学、心理学では、狂気そのものをとらえることは不可能になっている。狂気ははるかに遠く疎外されてしまっていて、精神医…
『精神疾患と心理学』(1954) 精神病理と身体病理とを同一の方法で分析することを拒否する。 この両者は、抽象作用の点、正常と病的の区別、病人と環境の関係からも、同一次元では分析しえない。 精神の病の特殊性の分析は、まず「心理学的次元」においてな…
ミッシェル・フーコー(Michel Foucault、1926 - 1984) (Wikipediaより) 経歴 ミッシェル・フーコーは1926年、ポアチェで生まれ、高等師範学校で哲学を専攻した。次いで数年間、ドレーやビショーなどについて精神医学の理論と臨床を研究し、この間多くの…
『人間ひとりひとり-現象学的精神病理学のアウトライン-』(1964) ヴァン・デン・ベルクの、精神科患者と精神病理学への取り組みの基本的姿勢、すなわち、精神病理学は、一人ひとりの患者を、全体として―単に病める有機体としてでないことはもちろん、身…
『病床の心理学』(1953) これは「専門書」ではなく、ナースのために執筆された本であるが、そこには、小さなものへの関心と配慮、滅び行くものへの慈しみが脈打っているのがはっきりと感じられる。 「健康人は、職歴、勉強、名声あるいはお金などの重大な…
ヴァン・デン・ベルク(Jan Hendrik van den Berg、1914 – 2012) 経歴 ヴァン・デン・ベルクは1914年、オランダ東部のデベンターに生まれた。1932年にハイ・スクールを卒業し、翌年小学校教諭の免許状を取得、1925年には教頭資格を得る。1936年、高校の数学…
夢みる人間の現存在分析 夢判断 夢は覚醒意識の残滓であり、その内容も意味も、覚醒時に比べて乏しいものである、というのが19世紀における一般の考えであった。この考えを逆転して、「夢の中には、覚醒時に抑圧されていた無意識の内容が秘められている」と…
メダルド・ボス(Medard Boss、1903- 1990) (anthonystadlen.blogspot.comより) メダルド・ボスは、スイスに生まれ、チューリヒ大学を卒業し、以後、精神医学、とくに精神分析と現存在分析の立場からの研究を続けた。1974年にはわが国にも来訪し、各地で…