DSM-Ⅳでは、性同一性障害(Gender Identity Disorder: GID)という診断名は、異性への同一化が強調されていましたが、2013年のDSM-5で性別違和(Gender Dysphoria: GD)に変更され、性別の不一致(違和感)という現象が強調されることになりました。
つまり、体験されるジェンダーには男か女かという固定観念を超えた、それとは異なる性同一性のこともあり、その苦痛は単にもう一方のジェンダーになりたいという欲求に限ったものではなく、指定されたジェンダーとは違うものであるなら、それに代わる別のジェンダーになりたいという欲求のこともあります。
性別違和(Gender Dysphoria)の診断基準(DSM-5)
子供の性別違和
A.その人が体験し、または表出するジェンダーと、指定されたジェンダーとの間の著しい不一致が、少なくとも6カ月、以下のうちの6つ以上によって示される(その中の1つは基準A1でなければならない).
- 反対のジェンダーになりたいという強い欲求、または自分は違うジェンダー(または指定されたジェンダーとは異なる別のジェンダー)であるという主張
- (指定されたジェンダーが)男の子の場合、女の子の服を身につけること、または女装をまねることを強く好む. また、(指定されたジェンダーが)女の子の場合、定型的な男性の衣服のみを身につけることを強く好み、定型的な女の子の衣服を着ることへの強い抵抗を示す.
- ごっこ遊びや空想遊びにおいては、反対のジェンダーの役割を強く好む.
- 反対のジェンダーに定型的に使用されたりまたは行われたりする玩具やゲームまたは活動を強く好む.
- 反対のジェンダーの遊び友達を強く好む.
- (指定されたジェンダーが)男の子の場合、男の子に定型的な玩具やゲーム、活動を強く拒み、乱暴で荒々しい遊びを強く避ける.また、(指定されたジェンダーが)女の子の場合、女の子に定型的な玩具やゲーム、活動を強く拒む.
- 自分の性器の構造を強く嫌悪する.
- 自分の体験するジェンダーに合う第一次および第二次性徴を強く望む.
B.その状態は、臨床的に意味のある苦痛、または社会、学校、または他の重要な領域における機能の障害と関連している.
青年および成人の性別違和
A. そめ人が体験し、または表出するジェンダーと、指定されたジェンダーとの間の著しい不一致が、少なくとも6カ月、以下のうちの2つ以上によって示される.
- その人が体験し、または表出するジェンダーと、第一次および/または第二次性徴(または若年青年においては予想される第二次性徴)との間の著しい不一致
- その人が体験し、または表出するジェンダーとの著しい不一致のために、第一次および/または第二次性徴から解放されたい(または若年青年においては、予想される第二次性徴の発現をくい止めたい)という強い欲求.
- 反村のジェンダーの第一次および/または第二次性徴を強く望む.
- 反対のジェンダー(または指定されたジェンダーとは異なる別のジェンダー)になりたいという強い欲求.
- 反対のジェンダー(または指定されたジェンダーとは異なる別のジェンダー)として扱われたいという強い欲求.
- 反対のジェンダー(または指定されたジェンダーとは異なる別のジェンダー)に定型的な感情や反応をもっているという強い確信.
B.その状態は、臨本的に意味のある苦痛、または社会、職業、または他の重要な領域における機能の障害と関連している.
(参考)
- LGBTは日本では2005年頃から使用されるようになった性的マイノリティーを限定的に指す言葉で、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(出生時に診断された性と、自認する性の不一致)の頭文字をとった総称です。
- 前3者は性指向、トランスジェンダーは性自認の問題ですが、最近では自身の性指向や性自認が定まっていないクエスチョニング(Questioning)を加えてLGBTQと呼ぶこともあるようです。
- 社会も生き方も多様化する中で、性指向も性自認も「その人の生き方にほかならい」ので、他人に迷惑をかけない限り、個人の自由で他人がとやかく言う問題ではないように思います。
- 本人が苦しんでいたり、生活上の障害がある場合には、医療を含めた種々の支援が必要になるように思います。。