臨床催眠の適応疾患:うつ病性障害
これまで、うつ病に催眠療法は禁忌とされ、その理由としては、以下のようなことが挙げられていた。
- クライエントの情緒不安定性がトランスにより予期せぬ反応が起こる危険性
- 感情転移が強くなり、強い感情が出現する
- 重症例では防衛機制が不十分なため衝動行為が起こる危険性
- 重症例に症状除去を行うと背後の症状が露わになる
しかし、近年うつ病に対して認知行動療法に催眠を付加する治療を行って注目すべき成果が報告されている。
- Yapko(1990,1992,2003)は、催眠現象の観点から、うつ状態とはネガティブな認知的、情動的、身体的現象が、年齢退行的に繰り返し体験されつつある現象としてとらえ、これに対抗する陽性の現象を年齢進行法によって体験させる催眠認知行動療法を発展させている。
- Alladin(1994,2007,2010)は、催眠認知療法は認知療法と比較して、有意にうつ症状を改善させることを報告している。
- 自殺企図にも催眠暗示が適用される。自殺衝動が起きると自然に催眠に入り治療者に接触しようと思い、治療者の承認なしには決行できない、という内容の後催眠性暗示を与えると有効であるとされる(Hodge,1972)
- メタ解析によるうつ病に対する催眠の効果量は0.57と推定されている(Shie, Yang & Koo, 2009)
2010年米国臨床催眠学会と米国臨床実験催眠学会が、その学会誌上で催眠とうつ病についての特集を組み、前述したYapkoとAlladinの報告以外に、以下のような報告も載せられている。