高齢者うつ病の薬物療法
- 高齢者や身体合併症がある場合には、副作用が出現しやすいため、どの薬剤も低用量から開始し(通常の初期用量の半量からでも良い)、増量も副作用に注意して緩徐に行う必要があります。
- 効果が不十分なときは、忍容性が許す限り、十分量を十分な期間使用します。
- SSRI(不安、強迫、衝動、過食などへの効果も考慮)、SNRI(意欲、疼痛への効果も考慮)、NaSSA(不安、不眠、食欲不振への効果も考慮)など忍容性に優れた抗うつ薬が第一選択
- 妄想などの精神病性の特徴や重症の内因性うつ病では、当初から三環系抗うつ薬(TCA)や非定型抗精神病薬を選択する場合があります。
不安焦燥・不眠が強い場合
- ベンゾジアゼピン系(BZ)は抗うつ薬の効果が出現するまでの不安感の軽減に有効ですが、依存性や認知機能の悪化、筋弛緩作用による転倒の危険もありますので、極力使用を避けます。
- やむを得ぬ場合は、短時間型を限定的に使用
- 不眠に対してはBZよりも、ミルタザピン、ミアンセリン、トラゾドンなどの睡眠作用のある抗うつ薬、あるいは非BZ(Z-drug)(エスゾピクロン、ゾピクロン、ゾルピデム)の方が望ましい。
- メラトニン受容体作働薬のラメルテオンや、オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントはせん妄の予防効果が報告されていますので( Hatta K, et al, 2014、2017)、高齢者のせん妄予防として有用かもしれません。
アパシーが強い場合
- ドパミン作動薬(ブロモクリプチン、アマンタジン、ペラミペキソール、ロピニロールなど)が有効であったという症例報告があります。
- メチルフェニデートが著効するという報告が多く、ペモリン、モダフィニルの効果も報告されています。
- オランザピン、アリピプラゾールが有効であるという報告。
- 抗うつ薬では、ドパミン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(DNRI)のbupropion(本邦未発売)。
- 認知症の場合は、コリンエステラーゼ阻害薬
- 休養よりは、レクリエーションを含めたリハビリ・行動療法的アプローチ
高齢者うつ病は治療抵抗性が多い
- 治療抵抗性の要因(Bonner &Howard, 1995)
- 身体疾患と複数の薬物治療、不適切な薬物量、認知症、心気的な訴え、精神病像の存在
- 治療抵抗性の場合
高齢者うつ病の薬物療法アルゴリズム(CANMAT2016)