治療抵抗性うつ病のステージ・モデル(Thase & Rush)
- 治療抵抗性うつ病と言っても、どの程度の治療抵抗性なのかを理解する上で、Thase & Rushのステージ・モデルは最初の取り組みです。注意しなければならないのは、適切な抗うつ薬治療として、抗うつ薬を十分な用量、十分な期間用いて効果を判定し、用量不足や観察期間の不足による見せかけの治療抵抗性うつ病を作らないことです。
最初の抗うつ薬治療で失敗したときに、抗うつ薬の用量、使用期間以外に留意すること
- 診断が正しいか?とくに双極性障害の可能性について検討する。
- 併存する身体疾患や他の精神疾患(とくに不安障害、自閉スペクトラム障害、身体表現性障害、アルコール・薬物の依存、パーソナリティ障害など)がないか?
- 重症度について?
- 服薬アドヒアランス(服薬がきちんとされているか)?
治療抵抗性うつ病の治療選択枝
切替(switching)
- 介入の時期
・最初に抗うつ薬を投与して、副作用が出て続けられない場合や全く反応がない場合には、他の抗うつ薬への切替が行われます。 - メリット
・単剤治療のため薬物相互作用は最小限
・単純な処方で低コスト - デメリット
・最初からの仕切り直しになるため、効果発現が遅くなります。
・先に投与されていた抗うつ薬のわずかな効果も消失してしまいます。
増強療法(augmenttation)と併用療法(combination)
- 介入の時期
・抗うつ薬治療によって最小限か部分反応しか得られないとき - メリット
・先に投与されていた抗うつ薬の部分反応を維持、増強できます。
・早い反応と寛解が得られる可能性 - デメリット
・複数の薬剤による薬物相互作用や副作用の増加
・単剤に比べれば高コスト
認知行動療法(CBT)の有用性
- 抗うつ薬治療とCBTは、それぞれ単独よりも併用の方が効果が高くなります。
- 抗うつ薬治療にCBTを併用すると、回復率が高まり、再発率も32%低下するとの報告があります。
- 治療抵抗性うつ病に対しても、CBTを行うことで、治療反応率も寛解率も高まり、その効果は3年間持続したとの報告があります。
- CBTは、うつ病の急性期でも維持期でも、第1選択の治療になります。