therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

2018-01-01から1年間の記事一覧

ヤスパースの現象学

ヤスパースの現象学 ヤスパースの現象学が、ビンスワンガーら人間学派諸家のいう現象学とは内容的に大きなへだたりがある。 彼の現象学は意識内容に生起するものをありのままに記述し秩序づけるという立場であって、本質直観によって「事象そのものへ」至ろ…

ヤスパースの精神病理学総論

『精神病理学総論』の構成と意義 「4年しか精神科の経験のない30歳そこそこの無給助手が一挙に精神医学の知識の全体を包括的にとらえた」著書『精神病理学総論』は1913年(全338頁)上梓され、その後1920年に第2版(全416頁)、1923年に第3版(全458頁)…

ヤスパースの精神医学の経歴

カール・ヤスパース(Karl Theodor Jaspers, 1883 - 1969) (EcuRedより) 精神医学と取り組んでゆこうとするものにとって、ヤスパースの『精神病理学総論』は、まず目を通さなくてはならない書物の一つに数えられるが、精神医学の領域におけるこのように卓…

クラインの技法と理論

クラインの技法と理論 クラインの技法 クラインは、1920年頃から、児童に対する精神分析療法をはじめた。一方、S・フロイトの末娘アンナ・フロイト(Anna Freud、1895- 1982)も児童治療を行っていた。成人の神経症患者を対象にはじめられた精神分析の技法を…

メラニー・クラインの業績

メラニー・クラインの業績 メラニー・クライン(Melanie Klein、1882 - 1960) 1952年(wikipediaより) S・フロイトによって19世紀の末に創始された精神分析は、精神病理学にとって基本的な研究方法のひとつとなっている。クラインも、精神分析的な精神病理…

現存在分析の基礎づけ

ビンスワンガーの現存在分析の基礎づけ ビンスワンガーの思想的展開の背景には、ハイデガーの『存在と時間』が大きな影響を与えた。1930年前後からは「第二の転回」をへて、現存在分析論に立ちながら人間存在へと接近していく。こうした努力から生み落とされ…

ビンスワンガーの人間形成と思想形成

ビンスワンガーの人間形成と思想形成 ルートウィヒ・ビンスワンガー(Ludwig Binswanger、1881 - 1966年) (bibliofilosofiamilanoより) スイスの生んだ精神医学の巨匠ルートウィヒ・ビンスワンガーは、その主著『精神分裂病』(1957)をはじめ、論文集『…

ユングの神経症理論

ユングの神経症理論 ユングの神経症理論は神経症が一般に劣等なもの低格なものとされる傾向があるのに対して、そのポジティプな側面を指摘し、人格の完成へと向う目的性を見出す。 彼は「神経症は常に、正当な苦悩の代用物にすぎない」とも言い、神経症その…

ユングの略伝

ユング略伝 カール・グスタフ・ユングはスイスのツルガウ州ケスヴィルというボーデン湖畔の小村に、1875年に生まれ、チューリヒ湖畔キュスナハトの自宅で、1961年、86歳の生涯を閉じた。 彼が生まれた時、フロイトは19歳、ジャネは16歳、そしてアードラーは5…

ユングとフロイト

ユングとフロイト カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung、1875 - 1961) (wikipediaより) ユングは、内向・外向の性格類型ないしはコンプレックスの心理学、すなわち分析心理学の創始者として有名である。 ユングの精神病理学の分野での広汎な仕事…

マイヤーの思想的背景と業績

マイヤーの思想的背景と業績 マイヤーの精神医学は、ひとくちに常識の精神医学と呼ばれる。精神障害を、生物-心理-歴史-社会という多次元の要因から成る統合体としての個人が、環境に対する適応に失敗して起こした反応であるとする彼の考えは、いかにもこ…

アドルフ・マイヤーの生涯

アドルフ・マイヤー(Adolf Meyer, 1866-1950) (100 Influenced Peopleより) アドルフ・マイヤーは、1866年、スイスのチューリヒから数マイルの近郊にあるニーダーヴェーニンゲンで生まれた。父は牧師で、叔父が医師であった。 マイヤーは、チューリヒ大…

ジャネの精神病理学

ジャネの精神病理学 ジャネの精神病理学の3期 第1期 『精神自動症』(1889)、『ヒステリー患者の精神状態』(1911)、『諸強迫と精神衰弱』などによるヒステリー論および精神衰弱論。 第2期 1920年代の心理学を体系化した時期 『傾向の断層的秩序』の8段…

ピエール・ジャネの人と生涯

ピエール・ジャネ(Pierre Janet, 1859-1947) (Wikipediaより) ジャネは、20世紀前半におけるフランス精神病理学界および心理学界の頂点に立つ巨匠であった。ジャネの晩年の思想は、サルトルやツットをとおして見直されている。 ジャネは1859年、当時のヨ…

クレペリンの二大精神病論

クレペリンの二大精神病論 クレベリンの貢献の中で後世に大きな影響を与え続けているのは、主として『精神医学教科書』に示されている二大精神病の研究である。 この二大精神病概念の形成過程として、1883年の精神医学教科書初版ともいうべき『精神医学摘要…

エミール・クレペリンの経歴

エミール・クレペリンの経歴 エミール・クレペリン(Emil Kraepelin, 1856 - 1926) 1920年(wikipediaより) 19世紀は、精神医学の歴史において、新たな歩みが開始された変革の時代だった。とくにその後半は、「宗教的、哲学的な物の見方に対する自然科学的…

フロイト 批判と功績

フロイトへの批判 心理性的発達について、主に男性に焦点が当てられ、女性への言及が少ない。 リビドーのような概念は測定することが難しく、フロイトの理論は科学的に検証することができない。 幼児期の体験が、将来の問題行動に発展することを予測している…

性器期(genital stage)

性器期(genital stage) フロイトの心理性的発達の最終段階で、思春期から始まり死ぬまで続きます。この時期は、潜伏期で抑圧されていた性的エネルギー(リビドー)が、再び活発になりますが、幼児期に性衝動の対象であった口唇、肛門、男根といった部分的…

潜伏期(Latency stage)

潜伏期(Latency stage) 潜伏期は、5歳前後から10~16歳までの思春期まで続き、年齢の範囲は育児の状況に影響を受けます。 男根期まで、リビドーは性器への関心や両親に対するアンビバレントな感情など性的欲求に注がれていましたが、この時期は、学校の友…

男根期(phallic stage)

男根期(phallic stage) 男根期は心理性的発達の第3期で3~6歳の間の時期で、リビドーの中心は性器になり、ペニスがあるかないかに関心がいきます。男児は、ペニスがあることを誇りに思い、女児は、それがないことに違和感を抱き、男女の違い(性差)を学…

肛門期(anal stage)

肛門期(anal stage) 口唇期に次いで、18ヶ月から3歳までが肛門期(anal stage)になります。この時期はトイレ訓練を繰り返し行い、腸や膀胱を自分でコントロールすることを学ぶわけですが、排泄物を保持したり、排泄する部位である肛門が性的刺激の中心に…

口唇期(oral stage)

口唇期(oral stage) フロイトは、性的欲動は、思春期からではなく乳幼児期から存在すると考えていて、口唇期は、心理性的発達理論(psychosexual development)の最初の段階で、生後18ヵ月頃までの時期になります。 口唇は授乳による快感を得る最初の部位…

フロイトによる神経症の病理

フロイトによる神経症の病理 概念と分類 神経症という言葉は、18世紀末にはじめてカレンによって、神経系の非器質性の諸疾患を包括するものとして使用された。このような「器質性の原因の見当らない疾患」を神経症とするという除外診断に基礎をおく概念は、…

フロイトの精神分析理論

ジグムント・フロイト(Sigmund Freud, 1856-1939) ) 1922年(wikipediaより) 出生地:チェコ・モラヴィア地方フライベルク 6つの基本的観点 意識、前意識、無意識という3つの心的領域をみとめ、精神活動がどの領域で営まれているかを明らかにしよとする…

インターネットゲーム障害

インターネットの普及は人類に大きな影響を与えているわけですが、その光と影をきちんと検証して、早期に対策を講じなければならない問題もたくさんあります。 ネット依存、ゲーム依存といったインターネットゲーム障害もそのひとつです。 DSM-5で「今後の研…

ギャンブル障害

依存症には、アルコールや薬物などに依存する「物質依存」と特定の行為や過程に依存する「プロセス依存」がありますが、ギャンブル障害は後者に相当します。 カジノ法案(IR推進法案)が可決されそうですが、やはりギャンブル障害への対策が不十分だと思いま…

覚醒剤やコカインの中毒と離脱

精神刺激薬中毒(Stimulant Intoxication)(DSM-5) A.アンフェタミン型物質、コカインまたは他の精神刺激薬の最近の使用 B.臨床的に意味のある問題となる行動、または心理学的変化(例:多幸症、または感情鈍麻、社交性の変化、過覚醒、対人関係過敏、不…

覚せい剤やコカインの使用障害

精神刺激薬使用障害(Stimulant Use Disorder)(DSM-5) A. アンフェタミン型物質、コカイン、またはその他の精神刺激薬の使用様式で、臨床的に意味のある障害や苦痛が生じ、以下のうち少なくとも2つが、12カ月以内に起こることにより示される 精神刺激薬…

アルコール中毒とアルコール離脱

アルコール中毒(Alcohol Intoxication)(DSM-5) A.最近のアルコール摂取 B. 臨床的に意味のある不適応性の行動的または心理学的変化(例:不適切な性的または攻撃的行動、気分の不安定、判断能力の低下)が、アルコール摂取中または摂取後すぐに発現す…

アルコール使用障害の診断的特徴と経過

アルコール使用障害の診断的特徴 アルコール使用障害は、離脱、耐性、渇望を含む一群の行動的、身体的症状として定義されます。 アルコール離脱は不快で強烈なため、有害な結果がわかっていても、離脱症状を避けるためにアルコール摂取を継続することがあり…