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スパノスの方策的役割履行と課題志向空想

スパノスの方策的役割履行と課題志向空想

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Nicholas Peter Spanos (1942-1994)

バーバーの課題動機説は、弟子のスパノスによって、さらに進展する。

スパノスは、催眠反応とは与えられた指示に対する単なる同調や服従、または指示された課題に対する単純な動機づけによって起こるものではない。課題動機説では、被験者が催眠にかかったふりをしていても催眠と見なすことになってしまうという状態派の批判に対して、スパノスは役割という社会心理学の概念を挿入し、被験者は催眠下にあるという「役割」に集中し、これを焦点にさまざまな方策を打ち出すことによって与えられた課題(暗示)をこなすように振る舞う。これが催眠行動の本質であり、これを方策的役割履行と名付けた。

また、彼は、非自発性の問題に対して、課題志向空想という概念を提唱した。これは、目標とされる(暗示)反応が自分の意思によらず、「自然」(非自発的)に発生すると被験者に想像させるように構成された暗示である。例えば、腕挙上誘導で用いられる「手首に結んだ大きな風船が腕を上に引っ張りますよ」「手のひらの下に軽い雲があり、それが上の方に動いていきます」といった類の暗示である。彼は、催眠の特徴である非自発性を、状態論派のように解離や退行によるものではなく、非状態論派の立場から、行動の外在化を強調した言語表現から生まれる産物であると見なした。ヒルガードの唱えた「隠れた観察者」も催眠の指示言語によって誘発された反応ではないかと推察した。

 

ヒルガードが、催眠状態説の主張の根拠とした催眠感受性の恒常性についても、スパノスはカルトン・スキルプログラムという感受性訓練を行うプログラムを開発して、催眠感受性が低いと判断された被験者に系統的な訓練を行った結果、50~80%の被験者に催眠感受性の亢進がみられ、その効果は2年半後の追跡調査でも維持されることを証明した。

(高石昇、大谷彰:現代催眠原論、金剛出版、2015.参照)