臨床催眠の適応疾患:不安障害
1)不安障害(パニック障害、恐怖症、強迫性障害、全般性不安障害)
- 不安障害に対する最も有効な心理療法は、認知行動療法である。暴露法や暴露反応妨害法など、何らかの方法で恐怖場面に直面することがその治療原則である。
- 催眠はこの際の抗不安反応イメージを亢進させる手段として有効である。催眠現象利用法によって症状を催眠現象から眺めるのが奏功を示す。未来に恐怖を予期する不安や恐怖症状に対しては、年齢進行法などを応用できる。この場合、症状と反対の関係にある状態を年齢進行法で与え、未来に不安・恐怖を克服する能力が成功裏に働いているイメージを暗示する。
- 強迫性障害に対する方略的指示療法では、強迫行為を延期する(強迫行為を始める時間を延ばすことで、非意図的行為を意図的なものに変える)、強迫行為を歌にして口ずさんだり書いたりする(強迫行為の無意味さを実感させる)、症状のイメージを変える、毎日ある時間だけこのことに悩む、などの指示が与えられる。エリクソンがよく行った方法は、行為のパターンを変え、場所もしくは強迫思考や行動を治療目的に合わせて利用するというものであった。
- 催眠現象利用法
- 年齢進行法
- 覚醒状態催眠
- 催眠認知行動療法
- 方略的指示療法
- 自我状態療法
2)心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 急性ストレス障害(ASD)やPTSDが心理療法の対象になったのは、主として第一次大戦、第二次大戦における戦争神経症が始まりであった。現代社会では、家庭内暴力、性的虐待、テロリズム、天災などの外傷体験が増加し、催眠家もこれらの症例に触れる機会が多くなっている。PTSDに対する催眠療法としては、SARIモデルと段階特定アプローチが最もよく知られている。両者の共通点は、PTSDの病理に基づいてゴールが定められ、それに従って催眠をフルに活用しながら漸進的に治療を進めていく点である。
- SARIモデル
- 安全と安定→自我強化法
- トラウマへのアクセス→トラウマ記憶の快復と統制
- トラウマ体験の処理→再融合
- 統合と新しい自我→新しい自我の確立
- 段階特定アプローチ