therapilasisのブログ

北総メンタルクリニック 院長の情報発信

血管性うつ病(vascular depression)の概念

血管性うつ病の概念提出の経緯 高齢者うつ病では、無症候性(症状が現れない)脳梗塞が多いということが判明して、血管性うつ病という概念が提出されています。その経緯について説明します。 Krishnanら(1988)は、高齢うつ病者が健常対象者に比してT2強調画…

高齢者うつ病の臨床的特徴

身体症状へのとらわれが目立ちます 痛み、めまい、胃腸症状、呼吸困難、動悸、排尿困難、頻尿、便通異常などの身体的不定愁訴が中心で、抑うつ心性はあまり目立ちません。 ⇒仮面うつ病(masked depression) プライマリケアで診療される患者の10~18%にうつ…

死別反応とうつ病

DSM-ⅣからDSM5になっての変更点 DSM-IV 死別反応を超えるものを、2ヶ月以上続くもの、または重度の特徴を持つものと定義。 DSM-5 2ヶ月や症状などの人為的な線を引かず、死別反応の範囲か否かは、臨床的な判断にゆだねられました。 この変更に当たっては、…

高齢者うつ病の多要因性と適切な治療の必要性

高齢者ではいろいろなことが要因になってうつ病になります。 うつ病の発症要因としては、遺伝・生育的な要因があります。性格、思考・行動パターン、ストレス脆弱性などが背景にあり、そこに心理社会的要因や身体的要因が絡まってうつ病を発症します。 高齢…

自傷行為とその裏側

リストカットなどの自傷行為は、「こころの痛み」を和らげるための行為と言われます。ですので、自傷行為を繰り返す人はこころの痛みが深いのです。 つらさから逃れて生きるための行為でもあるのですが、繰り返すなかで自殺企図につながることもあるので、注…

わが国の自殺者の推移とその背景

日本の自殺死亡者数の推移 わが国における自殺者数は2万人台であったものが、1998(H10)年に1万人程度増加して3万人を超え14年間連続して3万人を超え続け、その後減少に転じています(図)。 1990年代以降の社会変動 バブル景気に狂乱した拝金主義と利己主…

双極うつ病の治療ガイドライン

BAP(英国精神薬理学会)(2009) 軽症 クエチアピン ラモトリギン 中等症 クエチアピン ラモトリギン SSRI TCA(三環系抗うつ薬)以外の抗うつ薬 重症 ECT(電気けいれん療法) WFSBP(生物学的精神医学世界連合)(2010) 第1選択 クエチアピン 第2選択 単…