非定型うつ病の再認識
1959年West とDallyが、ECT(電気けいれん療法)とイミプラミン(三環系抗うつ薬)が無効で、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)であるipronoazidが著効を示し、不安恐怖症状とヒステリー性の特徴をもつ「非定型うつ病」を提唱しました。その後の議論を経てDSM-Ⅳ(1994年)では「非定型の特徴」として、サブタイプに設定されています。
女性の方が男性の2~3倍多く、若年者(10代から)で多く発症して慢性化しやすく、近年増加傾向にあると言われています。
- 症状の特徴
- 気分の反応性:他人に褒められたり、本人にとって好ましい出来事に反応して気分が明るくなります。好ましい環境が続いた場合は、より長期間気分が安定していることもあります。
- 過食:食事量の増加や体重の増加が出現します。
- 過眠:夜間の睡眠、昼寝の時間が延長して、睡眠時間が10時間以上になることが多くなります。
- 鉛様麻痺:手足に鉛でも入っているかのような重さを感じ、全身がひどくだるくなって、動くのが億劫になります。
- 拒絶過敏性:類ヒステリー性不機嫌症(hystroid dysphoria)と呼ばれこともありますが、対人関係における拒絶への過敏性が気分障害の期間だけではなく持続的にみられます。
- 逆転した日内変動:朝方よりも夕方から夜にかけて気分の落ち込みやだるさが強くなります。
- 分類と併存
- 治療
- MAOIの有効性が報告されているものの、副作用の問題もあり、広くは用いられていません。本邦でもセレギリンがありますが、うつ病への適応はありません。
- 三環系抗うつ薬の有効性は乏しいといわれていますが、晩期発症で非慢性型ではイミプラミンが奏効するとの報告もあります。
- 一般的にはSSRIやSNRIの使用と、buspirone、bupropion、アリピプラゾールの増強・併用などが行われます。
- 双極性障害の特徴や情動の易変性が目立つ場合は、リチウムや抗てんかん薬などの気分安定薬や非定型抗精神病薬などが使用されます。
- モダフィニル(本邦ではナルコレプシーに適応)が著効を示すことがあり、その場合投薬終了後も効果が持続するとの報告もあります。
- 季節性うつ病の場合には高照度光療法が有効です。
朝起きたらなるべく散歩などをして、日光を浴びることで、症状が軽減することがあります。 - 認知行動療法・対人関係療法などの精神療法・カウンセリングも有効です。