双極性障害の過少診断
双極性障害の37%は、単極性うつ病と誤診されている(Ghaemi,2000)
双極Ⅱ型障害の正確な診断率は9%に過ぎない(Vieta E et al, 2000)
うつ病外来受診者の60%が、実は双極Ⅱ型障害(Benazzi,2004)
なぜ、過少診断が起こるのでしょうか?
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うつ状態の時の受診では、ネガティブな認知のため過去のポジティブな経験は語られない。
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医師が過去の軽躁病エピソードを確認しない。
双極性障害ではうつ病相の占める割合が大きい
- 双極Ⅰ型障害では、寛解期を除いた病相期においては、うつ病相が67.7%で、躁病相と混合期の32.3%に比べて、約2倍の期間を占めていた。
- 双極Ⅱ型障害では、寛解期を除いた病相期においては、うつ病相が93.3%で、躁病相と混合期の6.7%に比べて、約14倍の期間を占めていた。
したがって、双極Ⅱ型障害では軽躁期を認識できていない場合が多い。
双極性障害の診断は難しい
- 双極性障害と正しく診断されるのに、10年以上かかった人が35%もあり、異なった診断名をつけられた経験を持つ人が69%もあった。
- 双極性障害の3分の2は、うつ病相から発症する。
- 躁病・軽躁病相(28.8歳)は、うつ病相(19.3歳)より発症年齢が、平均約9年遅れる。
過少診断された場合の問題点
- 双極性障害の自殺の生涯発症危険率は、一般人口の15倍。
- 生涯の自殺企図の出現率:双極Ⅰ型で36.3%、双極Ⅱ型で32.4%だが、既遂率は双極Ⅱ型の方高い。
- 双極性障害とわからずに抗うつ薬のみ投与すると、
賦活症状群(activation syndrome)の惹起、病相の不安定化、急速交代型(病相が年4回以上と頻回になる)化
などが起こり、予後を悪化させる。 - 女性の方が、男性よりも急速交代型や混合性の状態になりやすく、摂食障害やアルコール使用障害も多い。
双極性障害の過剰診断
外来症例の再診断により双極性障害は21%から13%に減少(Zimmerman, 2008)
双極性障害の診断が再確認されたのは43%に過ぎず、過剰 診断の症例は過少診断症例の約3倍(Zimmerman, 2010)
なぜ、双極性障害の過剰診断が起こるのでしょうか?
- 上記のような双極性障害の過少診断の問題がクローズアップされたから。
- 双極性スペクトラム障害診断の提案見直しなど、双極性障害の診断の拡がり。
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軽躁病エピソードの診断基準の緩和適用。
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大うつ病性障害の衝動性・攻撃性を混合状態と捉える。
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非定型うつ病の気分反応性を軽躁・躁病相と捉える。
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境界性パーソナリティ障害を双極性障害と診断してしまう。